研究課題
5-11世紀中国仏教思想史の根幹的な発展に関わる仏教漢語(漢字仏教語)に着目し,古典漢語・サンスクリット語・チベット語の一次資料の分析により,漢語特有の仏教語の語義解釈を検討した。仏典漢訳語彙研究は,外来文化の入り口の研究であるに対し,本研究は、訳語を漢語として理解し解釈するという結果の研究である。中国の仏教徒は,インド語本来の語義に加え,仏教伝来以前から存在した儒学や歴史学に基づく漢語特有の中国的語義解釈法を用いる重層的解釈を打ち立てた。インド文化にはサンスクリット語パーニニ文法に基づく正統的語義解釈と,「ニルクティ」「ニルクタ」「ニルヴァチャナ」(意味は同じ)という通俗的語義解釈とが共存し,両方が中国に伝わった。一方,中国には,仏教伝来以前から存在していたた儒学・史学の漢字文献において,漢語を逐語的に解釈する伝統が存在し,「同音の漢字は意味を共有する」という「音通」による解釈法を駆使する独自の解釈があった。仏教漢語解釈は,インド・中国の融合的解釈として結実した。漢語原典資料として古典諸注釈のほか,訓詁書『釈名』に着目した。最終成果報告書として船山徹『仏教漢語 語義解釈──漢字で深める仏教理解』(2022年3月)を出版し,研究意義を公開できた。報告書の構成は次の通り──「序論 インド伝来の仏教を漢字で思考し言い表す」「第1章 一字でも解釈は様々:原義と音通」「第2章 仏典漢訳から生まれた新漢字」「第3章 仏典が作り出した術語」「第4章 漢字の妙味:熟語の分解と再統合」「第5章 インドの解釈を引き継ぐ漢字音写語」「第6章 梵漢双挙:原語音写と漢訳の併記」「第7章 インド文化からの逸脱と誤解」「第8章 仏教漢語の特徴」「付録:サンスクリット複合語の分類を示す漢語」。この成果報告書で取り上げた具体的仏教漢語は50語ほどの,根幹と関わる基本要語である。
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公益財団法人仏教美術研究上の記念財団研究報告書四八『日本における梵網経と菩薩戒思想の問題』
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東方學報
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六度集経研究会『全訳六度集経:仏の前世物語』(法藏館)
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Mark SIDERITS et al. (eds.), Buddhist Philosophy of Consciousness: Tradition and Dialogue (Leinden/Boston: Brill)
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