研究課題
平成30年度は4年間の研究期間の1年目であった。当初の予定通り以下の4項目の調査・研究を行った。①インド伝統医学全書『アシュターンガ・フリダヤ・サンヒター』(AHS)の既に入手済みの版本と写本資料の解読・翻訳作業を進めた。さらにインド・アーメダバード、ジャムナガル、スリランカ・コロンボにおいて写本資料を調査し、新たに見つかった写本資料については所有者の許可を得て撮影を行い、内容を調査した。② インド伝統医学全書『チャラカ・サンヒター』のJajjataによる註釈文献『ニランタラパダ・ヴィヤーキャー』(NPV)の写本を用いた原典批判と英訳を本研究協力者Kenneth Zysk教授(コペンハーゲン大学)と共同で進め、インド伝統医学理論の成立に関して註釈文献NPVが果たした役割について検討した。また『チャラカ・サンヒター』への他の註釈文献とNPVとを比較しつつ各註釈文献を英訳し、その成果の一部を出版した。③ 上記①~②と同時に、インド伝統医学文献に見られる医学理論や治療についての専門用語(薬物・薬草名も含む)およびサンスクリット語の医学語彙についての調査・研究を進めた。その成果を上記②の研究成果と合わせて出版した。④上記①~③の成果に基づき、AHS第1巻第11~14章に見られるインド伝統医学理論成立期のドーシャ説を中心とする医学理論と心身論の解明を進めた。またこれらのインド伝統医学書と他のサンスクリット文献に見られる医学理論を比較し、インド伝統医学文献における心身論の意味とその成立過程について考察した。さらに、これまでのインド伝統医学の文献学的研究を総括し、総論的な論文をThe Oxford Handbook of Science and Medicine in the Classical World. New York, 2018.の一部として出版した。
2: おおむね順調に進展している
・本研究の開始までに、研究資料整備などの準備を充分に行っていたこと。・本研究協力者(Kenneth Zysk コペンハーゲン大学教授など)との研究協力関係が良好であること。・2018年度に行ったインドとスリランカでの現地調査において、写本等の新たな研究資料を発見し、写真撮影ができたこと。・本研究課題のこれまでの研究成果を、ほぼ当初の予定通り発表できたこと。主に以上の理由により、本研究は今のところ、おおむね順調に進展していると言うことができる。
本研究は、今後も主にインド伝統医学理論に関する以下の4項目の調査・研究を中心に進めて行くこととする。①インド伝統医学全書『アシュターンガ・フリダヤ・サンヒター』の写本や刊本などの資料整備と解読・翻訳。② インド伝統医学全書『チャラカ・サンヒター』のJajjataによる註釈書『ニランタラパダ・ヴィヤーキャー』(NPV)の写本を用いた原典批判と英訳。さらに『チャラカ・サンヒター』への他の註釈文献とNPVとの内容の比較研究。③ サンスクリット語の医学語彙(薬物・薬草名も含む)に関する調査・研究。④ 上記①~③の研究成果の総括としてのインド伝統医学理論成立史の研究。
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eJournal of Indian Medicine
巻: Vo.10, No.1 ページ: 1-113