研究課題/領域番号 |
18K00068
|
研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
山下 勤 京都先端科学大学, 経済経営学部, 教授 (00319435)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 医学史 / 伝統医学 / サンスクリット |
研究実績の概要 |
2020年度は当初の予定通り以下の①~⑤の5項目の調査・研究を行い、さらに⑥を追加した。 ①インド伝統医学全書『アシュターンガ・フリダヤ・サンヒター』本文の刊行本の解読・翻訳作業を進めた。またこれまでに本研究によって得られた写本資料について調査・解読を進めた。② インド伝統医学全書『チャラカ・サンヒター』のジャッジャタによる註釈文献『ニランタラパダ・ヴィヤーキャー』の写本資料などを用いた原典批判と英訳を、本研究協力者Kenneth Zysk教授(コペンハーゲン大学)と共同で進めた。③ 上記①~②を補足する研究として、インド伝統医学文献に見られる医学理論や治療についての専門用語(薬物・薬草名も含む)およびサンスクリット語の医学語彙についての調査・研究を進めた。 ④上記①~③の成果に基づき、インド伝統医学書『アシュターンガ・フリダヤ・サンヒター』第1巻第15~20章に見られるインド伝統医学理論成立期のドーシャ説を中心とする医学理論と心身論の解明研究を進めた。 ⑤World Health Organization (WHO) の要請を受け、2019年12月にインド・ジャムナガルで開催された第1回Working Group Meeting for Developing the Standard Terminology Documents of Ayurveda, Unani, and Siddha Systems of Medicine に出席し、インド伝統医学用語標準化のため、各種専門用語の選択とその英語による翻訳と解説の準備をすすめた。本年度もこの翻訳・解説のための作業を継続した。⑥大正新脩大蔵経やパーリ語仏典などの仏教文献中に見られる医学・医療に関する記述を抽出、読解・翻訳し、インド伝統医学との関連性について考察した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の開始までに、研究資料整備などの準備を充分に行っていたこと、また本研究協力者(Kenneth Zysk コペンハーゲン大学教授など)との研究協力関係が良好であること、といった理由から、本研究そのものは順調に推移している。 しかし、これまでの現地調査によって多数の写本等の新たな研究資料が収集できたため、その分析に時間がかかること。 WHOの急な要請によりインド伝統医学用語標準化の作業を進めたため、当初予定していた論文作成など研究成果発表の準備が遅れていること。 新型コロナウイルス感染症の拡大により、当初予定していたインドなどへの写本等の現地調査が不可能となったため、新たに本研究に関連する新たな研究項目(仏教文献とインド伝統医学)を設定したこと。 以上の理由から、本研究そのものはおおむね順調であるが、研究成果の発表に関してはやや遅れていると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は、今後も主にインド伝統医学理論と専門用語の語彙に関する以下の5項目の調査・研究を中心に進めて行くこととする。しかし、2021年度も新型コロナウイルス感染症の影響で、インドなど海外への現地調査は引き続き難しい状況であることから、現地調査を中止し、本研究に関連する新たな研究項目⑥を追加することとする。 ①インド伝統医学全書『アシュターンガ・フリダヤ・サンヒター』の写本や刊本などの資料整備と解読、英語への翻訳と解説の作成。 ② インド伝統医学全書『チャラカ・サンヒター』のジャッジャタによる註釈書『ニランタラパダ・ヴィヤーキャー』の写本を用いた原典批判と英語への翻訳。同時に『チャラカ・サンヒター』への他の註釈文献と『ニランタラパダ・ヴィヤーキャー』との内容の詳細な比較研究。 ③ サンスクリット語の医学語彙(薬物・薬草名も含む)に関する調査・研究。 ④ 上記①~③の研究成果の総括としてのインド伝統医学理論成立史の研究。 ⑤インド伝統医学専門用語の英語への標準的な翻訳と解説の作成。⑥仏教文献とインド伝統医学の関連についての調査・研究。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初はインドなど海外への写本などの現地調査のための旅費を支出する予定であった。しかし、2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大のため海外渡航がほぼ不可能となり、現地調査を行うことができなくなった。このため当初予定していた海外調査用の旅費に関しては「次年度使用額」とすることとした。
|