研究課題/領域番号 |
18K00076
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菊地 達也 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (40383385)
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研究分担者 |
鎌田 繁 東京大学, 東洋文化研究所, 名誉教授 (70152840)
柳橋 博之 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (70220192)
井上 貴恵 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (70845255)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ドゥルーズ派 / シーア派 / 十二イマーム派 / イスマーイール派 |
研究実績の概要 |
2019年度における研究代表者の一番目の研究主題は、現代ドゥルーズ派の自己表象の分析であった。“The Changes of the Druze People’s Self-expression in the Last Several Decades of the Twentieth Century”では、スンナ派が多数派を占める地域においてドゥルーズ派が他者に対して自己をどのように位置づけようとしているのか、宗派指導部の方向性に反する自己表象がどのような背景のもとでどのようにして生まれたのかを考察し、1990年代における同派平信徒を中心とする新たな潮流を同派の思想史上に位置づけた(先の論考は2019年9月に提出済みであるが、論文集の発行が2020年度以降になる見込みであるため今回の研究業績の中には含まれていない)。 研究代表者の二番目の研究主題は、異教的とすら言える神話的教義を土台にしていたイスマーイール派が異教的、あるいは反体制的な特質を払拭するためにギリシア哲学をどのように利用したのかを分析することであった。「イスラームにおける正統と異端」では、『啓典の母』にその典型を見出すことができる極端派的で神話的な宇宙論が10-11世紀のイスマーイール派において新プラトン主義的宇宙論に置き換えられていく過程を示しつつ、「神話』という語と「哲学」という語を問い直そうとする試みであった。その他には、ドゥルーズ派、イスマーイール派などのマイノリティ宗派において重要な位置を占める霊魂論については、シーア派系諸派だけでなくイスラーム教内のその他の思想潮流も含めて整理し直した。その成果の一部は、啓蒙的な内容ではあるものの、2020年度の冒頭に刊行された。 研究分担者の研究活動についていえば、鎌田は十二イマーム派神秘哲学について、柳橋は預言者伝承について、井上は神秘主義についての研究を進め、「10.研究発表」にあるように2019年度内にその成果を発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2019年度の刊行に間に合わなかった論考や作業期間が次年度にまたがる研究を含めれば当初の予想を超える研究成果であったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで順調に研究は進展してきているので基本的には予定通りである。2019年度には諸般の事情によりおこなえなかった海外調査を2020年度におこなうつもりだったが、新型コロナウィルスの問題が起きたため別のやり方で対処するよう、現在調整中である。
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