研究課題/領域番号 |
18K00077
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研究機関 | 清泉女子大学 |
研究代表者 |
鶴岡 賀雄 清泉女子大学, 文学部, 非常勤講師 (60180056)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 神秘主義 / スペイン / 詩的言語 |
研究実績の概要 |
2019年度は、二十世紀中葉以降のいわゆる現代思想におけるスペイン神秘主義の受容ないし利用のかたちを調査することに多くの時間を費やし、とくにジャック・デリダやジョルジョ・アガンベンにおけるスペイン神秘主義への言及状況を調査検討したが、とくに論文等にまとめるには到っていない。 しかし、二十世紀前半において「神秘主義」が称揚され、とくにアビラのテレジアと十字架のヨハネを中心とする近世スペイン神秘主義に注目が集まった背景には、この時期の哲学や人文諸学における特権的(ときに超常的)「体験・経験」への関心の高まりと、文芸理論における「詩的言語」の特権性への関心の高まりがあった、という見通しを得た。前者についてはアビラのテレジアの神秘主義体験叙述が関心の焦点となり、後者に関しては十字架のヨハネの神秘的詩篇が多方面から注目された。こうした問題関心のもとにさまざまな思想家によってスペイン神秘主義の諸テクストが読み直され、そうして再解釈された彼・彼女らの神秘体験や詩的体験、また体験叙述言語や詩的言語が、教義学的神学や狭義の心理学や文芸理論の限界を超える哲学的ないし形而上学的思索の資源となる、という相互豊饒化のプロセスを見て取ることができる。こうした観点から、いくつかの学会での研究発表および学術論文執筆の準備を進めた。 ただし、そのために必要な、二十世紀前半から中葉におけるフランスの状況を調べるための雑誌資料の収集が、予定していた海外調査の中止によって困難になっており、また日本国内の図書館の利用も現状では難しく、所期の計画どおり研究を遂行できるか危惧を抱いている。 また、当研究でとくに焦点を当てる思想家であるライモン・パニカーについては、研究がかなり進展したが、年度末に予定していた関連資料調査が中止を余儀なくされ、善後策を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度末(2月~3月)に、研究成果発表と資料調査のために、スペイン(バルセロナ)のポンペウ・ファブラ大学、およびジローナ大学に出張する予定だったが、新型コロナヴィールスの蔓延期に重なり、訪問先の関係者と相談の上、直前にキャンセルせざるを得なくなった。 研究成果についてスペインの研究者たちの意見や評価を聞く機会が得られず、また重要な研究対象となっているライモン・パニカーの資料を調査することができなくなったため、研究の進展に遅滞を来している。条件が改善され次第、上記の研究発表および資料調査を遂行したいが、現状では見通しが立っていない。 同様に、フランス(パリ国立図書館)において、2020年度の前半に関連雑誌の調査を行う予定だったが、これも遂行の見通しが立っていない。国内で入手・閲覧可能な資料についてはほぼ検討が済んでいるが、これだけでは不十分な状況にある。 また、研究成果の発表を、国際学会を含むいくつかの学会で行う予定だったが、いずれも学会自体の中止が決定され、成果の発表方法に問題が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
海外資料調査については、状況が改善し次第、早急に遂行したい。本年度が、当研究の最終年度であるため、調査が不十分な場合は、現在入手済みの資料にもとづいて可能な限り有意義な研究を遂行する。 またヨーロッパに留学中の知人に、資料の収集およびコピーを依頼する可能性も検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた、スペイン(バルセロナ)への出張が、新型コロナヴィールスの蔓延に伴い中止(延期)を余儀なくされ、旅費に大きな未使用分が生じた。2020年度にぜひ遂行したい。 また、海外に発注していた高額な書籍の入荷が遅れ、物品費に未消化分が生じた。 また、研究の遅れによって、英文発表原稿の校閲料の支払いが発生しなかった。
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