本研究は、東北地方の青森県を中心に、「辺境性」・「貧困」という地域的特性の視点に基づいて、キリスト教、とりわけカトリック教会の教化や定着の過程、受容状況をフィールド調査に基づいて、実態を調査することが目的であった。 本研究のために当初三つのフィールド調査を予定していた。ひとつは、ケベック外国宣教会による宣教司牧活動とその受容の状況に関する資料の入手と文献研究で、ケベックに赴く予定であった。また、仙台教区教勢データに基づく量的調査でカトリック仙台教区本部に赴き、国立療養所松丘保養園(ハンセン病療養施設)内の教会の入所者信者のライフヒストリーの聞き取りのために、同保養園に赴く予定であった。いずれも新型コロナ禍の中でフィールド調査を断念せざるをえなくなり、資料収集と文献調査が中心となった。 辺境性という観点から青森県を中心とする東北地方のキリスト教受容史を研究をすすめる上で、基盤となる資料の収集と文献の読み込みは、一定程度行うことができた。戦後期のカトリック教会の状況は、教皇庁の宣教政策とのつながりから考察する必要があることがわかり、明治期以降の宣教政策やキリシタン関連を含めキリスト教史全般にわたる俯瞰的な文献収集に努めた。 補助期間中に共編著1冊と学会誌の査読付き論文1本を発表したものの、今年度は学会誌に文献・図書紹介を執筆したのみで、残念ながらまとまった研究発表を行うことができなかった。 なお、研究期間を一年間延期させていただいたが、ほとんどの学会がオンライン参加となり出張旅費がほぼかからなくなったことや、フィールド調査できない状況に変化がなかったため、本年度の基金に残金が生じた。
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