研究課題/領域番号 |
18K00079
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研究機関 | 茨城キリスト教大学 |
研究代表者 |
志賀 市子 茨城キリスト教大学, 文学部, 教授 (20295629)
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研究分担者 |
宮内 肇 立命館大学, 文学部, 准教授 (10722762)
稲澤 努 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 准教授 (30632228)
石野 一晴 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 講師(非常勤) (90804047)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 聖地 / 中国 / 広東省 / 粤西地域 / 鑒江流域 / 水上居民 / 宗族 / 経堂 |
研究実績の概要 |
当該年度は、科研メンバー全員が個別に粤西地域での現地調査と国内外の図書館等を利用した資料調査を行い、ワークショップを開催してその成果を公表する計画であったが、令和二年三月頃からのCovid-19の感染拡大によって海外調査が不可能となった。そのため、当該年度の全体の計画をオンラインによる研究会及び学会での企画報告に変更せざるを得なくなった。 令和二年7月4日に行った研究会(オンライン開催)では、前年度までの研究の進捗状況と12月での学会の企画報告に向けてそれぞれ報告を行った。これを下敷きとして、11月末から12月初めにかけて、オンラインによる打ち合わせを二度ほど行い、12月12日の華南学会研究大会(オンライン開催)において、企画報告「近代中国の地方社会と信俗文化-粤西地域を事例として」を行った。ここで志賀は企画の趣旨説明と「粤西地域における経堂と民間経典」という報告を行った。宮内は「同族と革命への信仰?―清末民初期・信宜県の有力宗族の行動から」というタイトルで、清末民初期信宜県の有力宗族の革命運動への参加とその動機を明らかにした。また稲澤は「高州の水上居民の陸上がりと信俗の変遷」というタイトルで高州の水上居民の近現代史と信仰、習俗の変遷に焦点をあてた。さらに石野は、「石刻史料から見た[ン+先]夫人信仰」というタイトルで、これまでに収集してきた[ン+先]夫人に関する石刻資料を分析して、主に明清時代における[ン+先]夫人信仰の実態を明らかにした。 論文・書籍では、2018年に志賀が台湾の仏光大学主催の「扶鸞文化與民衆宗教国際学術研究会」で発表した清末粤西地域の経堂と救劫経に関する論文が刊行された。また宮内は華南地域をフィールドとする、本研究計画とも関連する書評を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当該年度は新型コロナ感染症の拡大とその水際対策によって海外渡航が困難となり、海外での現地調査や資料調査は不可能となった。また国内の図書館も閉鎖や使用制限が続き、新しい資料の調査ができなくなってしまった。当該年度は最終年度ということで、国内外から研究者をゲストとして招き、ワークショップを開催する予定だったが、やはりコロナ禍により、海外の研究者を招いたり、国内であっても対面での会議を開催したりすることが不可能となった。このため最終年度に予定していた計画をほとんど断念せざるを得なかった。 そうした中で評価できる点としては、12月に華南学会の研究大会(オンライン開催)において、科研メンバー全員による研究報告を行ったことである。ここでの報告は、中途段階とはいえ、研究成果のとりまとめに直結するものとして、十分評価できるものであると考えている。 また当該年度はオンライン授業への移行にかなりの時間が費やされ、論文や報告書を執筆する時間が十分とれないという状況もあった。そうした状況ではあるが、この科研に関連する成果として、個別の研究実績に示すように、いくつかの論文や書評が刊行されたことも補足しておきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を進めていく上で、中国や台湾での調査は必要不可欠であるが、現状では新型コロナウイルスの感染が止まらないため、今年度も海外への渡航はきびしいと言わざるを得ない。現時点での研究の推進方策としては、個別にはこれまで収集した文献資料およびフィールドデータを整理・分析し、また調査旅費として使用するはずだった経費を文献購入にあて、本研究計画に関連する論文または報告書の執筆を進めていく予定である。全体としては、華南学会発行の学術雑誌『華南研究』に、昨年12月に行ったオンラインによる企画報告を踏まえて特集を組み、そこで科研メンバー全員が本研究計画に関連する論文を発表することを計画している。本年の夏までに論文を提出し、査読を経て、12月には刊行の予定である。それ以外の研究会や調査計画の実施については、今後の新型コロナの感染状況を鑑み、実行可能かどうか見極めて判断することにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大による海外渡航の制限、国内外での学会の開催中止、またはオンライン開催により中国広東省や香港での現地調査および移動を伴う対面での研究集会が行うことができなかった。また最終年度ということで実施する予定であったゲストスピーカー招いてのワークショップも実施することができず、招聘旅費や学会準備に必要な人件費、謝金、印刷費がすべて使用できなくなったためである。今年度は、国内出張と、論文執筆の際の補足資料収集(購入)費にあてたい。特に華南関係の先行研究を幅広く購入する予定である。また、場合によっては海外からの文献複写取り寄せ費用にもあてたいと考えている。
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