本研究は、死者の居場所として急速に普及した霊園と都心の大規模な機械式納骨堂の実態と運営について調査研究を行った。霊園は東京下であり郊外である八王子地区を対象とした。名義貸しとは「大規模墓地・納骨堂を作り区画を販売し多大な利益を得ることを目的として営利企業が寺院の名義を借りて実質的に墓地経営をしようとする事例」のことである。 八王子市に存在する霊園は41カ所で、名称、住所、運営法人、法人住所、運営組織、霊園区分、宗派・宗教、総面積、区画数を調査した。調査からは、他地域から八王子地区へ収益事業として霊園を経営する法人はきわめてわずかであることがわかった。マスコミや週刊誌が宗教法人のあくどい営利事業の典型として取り上げる「名義貸し」はわずかであった。名称、住所、運営法人等を調査し一覧を作成した。明かな名義貸しは把握できなかった。名義貸しを確認できなくとも、宣伝広告や維持に業者が深く関わっていることは明かであった。 東京での名義貸しの事例として金沢市の伝燈院を現地調査した。伝燈院は、金沢市の郊外に位置する小規模な一時院にもかかわらず、東京都港区赤坂に赤坂浄苑として大規模な機械式納骨堂を経営しており、名義貸しが指摘されてきた。法人へのインタビューはできなかったが、現地の法人は一般的な寺院の形態をしていない通常の家屋で、境内墓地もほとんどが空いている状態であった。こうした地方の小規模な宗教法人が赤坂の地に初期費用の大きい機械式納骨堂を建設するだけの費用とノウハウを有しているとは考えにくかった。 都市における霊園や機械式納骨堂の経営は、明らかに大きく業者に依存している。それらの実態は、宗教法人と業者のトラブルによる裁判でも生じない限り外へ示されない。しかし、いったん経営が行き詰まれば、被害を被るのは墓地の購入者である。霊園や機械式納骨堂の永続性はかなりあやしいと思われる。
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