本研究は、インドのカトリック教会を事例として、現地調査を踏まえ、宗教多元社会における普遍宗教の現地適応の諸相に観察される「儀礼の社会性および多義性」の問題に焦点を当てて、考究・分析するものである。カトリック教会は、「普遍性」と「多様性」という矛盾する方向性を併存させる宗教である。カトリック教会は、宣教地で地域文化と接触し、現地化する過程の中で様々な変容を経験してきた。現地調査を行い、インドのタミルナードゥ州カンニヤークマリ県で、カトリック教会の典礼の在り方、また、カトリック教会の正式な宗教儀礼がカトリック教会の普遍性を維持しながら、現地適応がなされているのかを調査によって具体的に明らかにすることができた。 しかしコロナ禍で、インドへの渡航が難しくなり調査の方法を変更し、オンラインを使って、インフォーマントへのインタビューや情報収集を集中的に行うことにした。インドのカトリック教会の宗教者(司祭、修道女)には、オンラインで、コロナ禍におけるカトリック教会の感染症病への対応や対策、ミサなど本来は教会で信者と一緒に行う宗教儀礼をどのような形で継続していたのか、これまで行っていた信者への宗教的なサービスに関する活動状況に関して多くの情報を得ることができた。また、信者へのオンラインを使ったインタビューや情報交換を行い、コロナ禍における信者の側から見た宗教組織のサービスに関する情報を得ることができた。新型コロナの世界的な大流行という想定以外の出来事が既存の宗教組織に与えた影響を知ることができた。 また、カトリック教会のインカルチュレーションの事例について、インド系のカトリックの移民が多いシンガポールとマレーシアで調査を行った。
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