研究課題/領域番号 |
18K00100
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
石黒 盛久 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (50311030)
|
研究分担者 |
厚見 恵一郎 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (00257239)
鹿子生 浩輝 東北大学, 法学研究科, 教授 (10336042)
村田 玲 金沢大学, 人間社会研究域, 客員研究員 (20507892)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | マキアヴェッリ / フィレンツェ文化 / 政治思想 / 宗教と政治 / ルネサンス |
研究実績の概要 |
石黒は『金沢大学歴史言語文化学系論集』に論文「マキアヴェッリの宗教-その政治神学における暴力と愛」を公表した。本論考は"The Religion of Machiavelli:Love and Violence in His Political Theology"の題名の下、De Gruyterより刊行の論集に掲載の予定である。 鹿子生はケンブリッジ大学にて在外研究を行い、本研究に関連する文献資料を博捜するとともに、アングロサクソン圏の第一線のマキアヴェッリ研究者と活発な意見交換を行い、その成果の一端は『法制研究』所載の論考「マキアヴェッリとグィッチャルディーニ-二つの共和国論」に示されている。 村田は社会思想社刊『支配の政治理論』に「マキァヴェッリの支配論―その近代性に関する若干の指摘」を掲載し、"Machiavelli’s La Umana Commedia: Key Thoughts on Understanding his Major Political Works",A Journal of Political Philosophy, No.24, 2018およびそのイタリア語訳"L’umana commedia di Machiavelli: pensieri chiave per capire le maggiori opere politiche",Rivista di Politica Machiavelli, all’ombra del Sol Levante. a cura di Daniela Coli, 2018を公刊、研究成果を積極的に海外に発信している。 厚見は村田の著作『喜劇の誕生-マキアヴェッリの文芸書作品と政治哲学』の書評を『社会思想史研究』に寄稿、丸善刊『社会思想史辞典』において「人文主義」、「マキアヴェッリ」の二項目を担当した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
石黒は本テーマに狙いを絞った最初の論文を刊行したことにより、以後問題を分析する基本的視座を獲得すること、ある程度成功した。彼のサヴォナローラ評価をモーゼ評価との対比において確定すること及び、モーゼ的宗教の同時代における類似物たるイスラム教についての彼の評価を考察することが、今後の進展の重要な鍵となることが確認されたことは重要である。 鹿子生については英国滞在という利点を生かし、欧州各地の図書館で重要ないくつかの文献を調査収集しつつ、同時代のフィレンツェの政治文化につき、特にグィッチャルディーニの対比からより立体的に把握を深めているところである。村田は厚見と提携しつつ、特に世紀初頭フィレンツェの思想界を席巻したルクレティウス唯物論の出現と、そのマキアヴェッリ思想との連関性についての省察を着実に進めている。 そのような実績の積み上げという意味では研究はほぼ順調に進められているが、突如決まった鹿子生の海外渡航のため、定期的な相互検討会を実施することができなかったことは、今年度の未達成事項というほかない。メール、スカイプ間での状況確認は適宜実施したがそれのみでは不十分の憾みもある。課題の解明に向けて順調な進展を見せながら、予定していた会合を十分実施し、相互に刺激を与えあうという活動ができなかったことのために、「おおむね」順調な研究推移であるとした。 また上記ルクレティウス唯物論のフィレンツェにおける受容につき村田、厚見がより充実した成果を公表することが期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
石黒に関しては今後マキアヴェッリの宗教観の焦点となるモーゼとの対比におけるサヴォナローラの評価を、当時のフィレンツェの政治文化に即し具体的に解明する作業を行うため、サヴォナローラの政治的著作の読解を進めるとともに、16世紀初頭フィレンツェにける宗教と政治の相関性の考察を、特にこの時期盛行した終末論的千年王国論との連関から調査するとともに、政治的宗教としてのイスラム教や古代ローマ異教に対するマキアヴェッリの評価をも目指したい。 こうした作業の推進には、鹿子生が欧州滞在中に英国はじめ各地において収集した文献資料が大いに活用されるはずである。村田、厚見両人については、上記の如くルクレティウス唯物論のフィレンツェ政治文化への受容に関し、具体的成果を上げることが課題となる。鹿子生の9月の帰国以後をめどに、当初予定していた勉強会を定期的に実施する予定であるが、それ以前に石黒・厚見・村田の三名のみによって、予備的検討会を開催する。また特に11月には石黒が、東京で催される国際的研究集会において、上記の論考"The Religion of Machiavelli: Love and Violence in His Political Theology"につき口頭発表を行うことが決まっている。加えて本年度末(2020年3月)にもイタリア・フィレンツェでの国際シンポにおいて、同一テーマによる発表を行うことを検討中である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度厚見の体調不良により、同人が十分な研究活動を行えなかったことが主要因である。今年度は体調が回復し、通常の研究活動がほぼ可能となったため、同人の本計画の中での役割に随時微調整を加えながら、十分な参加が可能になる体制を整えたい。
|