研究課題/領域番号 |
18K00100
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
石黒 盛久 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (50311030)
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研究分担者 |
厚見 恵一郎 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (00257239)
鹿子生 浩輝 東北大学, 法学研究科, 教授 (10336042)
村田 玲 金沢大学, 人間社会研究域, 客員研究員 (20507892)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マキアヴェッリ / 宗教 / 共和国 / 人文主義 / 暴力 / 政治思想史 / フィレンツェ |
研究実績の概要 |
当該期間中の研究成果につき、共同研究グループを構成する4人の研究者のうちまず代表者である石黒は、論文『マキアヴェッリにおける「暴力と宗教」再考』(石川県立大学紀要3号)及び史料紹介「F・ヴェットーリのマキアヴェッリ宛書簡(1513年3月15日~4月19日)」(『世界史研究論叢』9号)、「翻訳と注解 1513年4月21日付F・ヴェットーリ発マキアヴェッリ宛書簡」(『金沢大学人間社会学域学校教育系紀要』第12号)を発表するとともに、早稲田大学中世・ルネサンス研究所International Symposium "Religion and Violence in Medieval and Early Modern Europe"においてThe Violence and Religious Covenantin Machiavelliという発表を行っている。また鹿子生は岩波書店より単著『マキアヴェッリ-『君主論』を読む』、論文「マキアヴェッリとグィッチァルディーニー二つの共和国論」(法制研究)を刊行するとともに、学会発表「プラトンとマキアヴェッリ」(新プラトン主義協会大会)を行った。他方厚見は石崎嘉彦と共に編著『レオ・シュトラウスの政治哲学-『自然権と歴史』を読み解く』を出版している。村田は『政治哲学』26.27号にレオ・シュトラウスの二つの論考〈「ニーチェの『善悪の彼岸』についての覚書」「イェルサレムとアテナイ-若干の予備的な諸省察」〉の翻訳を掲載した。また11月23日に都内にて実施した合同勉強会を踏まえ、本科研に基づく共同企画としてシンポジウム「マキァヴェッリと宗教―社会・国家形成に〈神〉は必要か」(関西大学法学研究所)を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のようにメンバー各自が着実に自身の研究を深化させるとともに、シンポジウムの開催など共通のプラットフォームの構築にも留意しながら、共同研究を進めている。本年はメンバー鹿子生の海外研修からの帰国を受け、複数の合同勉強会の実施により、研究の「共同」面を加速させることが必要となろう。 本研究の主題はマキアヴェッリにおける「宗教と暴力」概念の考察を核に、16世紀フィレンツェの国家論をめぐる政治文化の漸増を解明することであるが、先年実施したシンポジウムの成果をつうじ、そうした主題についての議論にメンバー、さらにはそれ他の研究者を巻き込む基盤を形成することに成功したと考えている。 即ち『君主論』における非常時の指導者における政治性と宗教性の二重性(石黒)と、『ディスコルスィ』において浮上した「改革」可能性の自己否定による政治論理のゼロ地点との直面(鹿子生)が、マキアヴェッリの思想においていかに整合されるかが、解決すべき議論の焦点となるという認識に他ならない。こうした難問の解決にシュトラウスのマキアヴェッリ観さらには政治思想観への参照(厚見・村田)はその有効な補助線を提供するものとなると考える。 このようにメンバー相互の個別研究の、接点の析出に成功した点で、本研究は当該年度おおむね順調に推移したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年も先年に引き続き、合同勉強会→シンポジウム→論考の発表というプロセスの中で、互いに議論を交わし考察を深めていくことが予定されていたが、今般のコロナ禍により対面方式に基づく勉強会、シンポジウムの開催が当面不可能になってしまった。 これに代わる意見交換の場の確保の手段につき考慮中である(zoom、skype等のツールの活用)。また海外からの研究者の招聘も想定し予算請求を行っていたが、それが当面不可能になったことから、研究の国際性を担保するため他の手段の可能性も模索している(欧文による研究成果の公刊など)。またシンポジウムに代わるものとして、研究発表動画の編集によるデジタルシンポジウムや、共同研究の現況を提示する小論集の刊行も視野のうちに入っている。 加えて研究の射程を16世紀フィレンツェ政治文化全般に拡大するため、マキアヴェッリ以外の著作家(石黒に関してはサヴォナローラ、ボテロ、鹿子生に関してはグィッチャルディーニ、村田に関してはルクレティウス)につき、マキアヴェッリとの対比の視点から考察を行うことも必要とされるる
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次年度使用額が生じた理由 |
2-3月にかけ春休みを利用して合同勉強会を実施したり、海外出張を実施したりする予定であったが、今般のコロナ禍によりこうした計画がすべて中止になったため。可能であれば事態終息後、本年度中に同様の事業を実施したいと考えている。だが当該年度未実施予定であったこれら出張事業が本年度において実施できない場合でも、本年前半は全ての対面式の事業の実施の困難が予想されるため、繰越額は遠隔会議等の実施ツールの導入等により、本研究を有効に促進する目的で使用し得るものと考えている。
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