研究課題/領域番号 |
18K00101
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
香川 知晶 山梨大学, 大学院総合研究部, 医学研究員 (70224342)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | デカルト哲学 / 17世紀 / 新哲学 / アドリアン・バイエ |
研究実績の概要 |
本研究は総計1000頁にわたる詳細なデカルトの評伝アドリアン・バイエ『デカルトの生涯』(1691年)を海外の研究者とも綿密に連携しながら全訳し、詳細な注解をほどこすことによって、近世初頭の17世紀前半の学問を取り巻く社会環境を解明し、近世哲学の意義を再考することを課題としている。研究は研究代表者の香川の他、国内の研究協力者として名古屋大学名誉教授・山田弘明、国外(フランス)の研究協力者としてパリ・デカルト研究センター・アニー・ビトボル=エスペリエス博士の3名を中心に遂行する計画である。 本研究の開始年度にあたる本年度は全訳及び注解の基本的な枠組みをまず暫定的に設定し、実際に作業を開始しながら、必要な修正を加えながら、その枠組みを確定する作業が研究の中心となった。そのため、『デカルトの生涯』第1巻を香川、第2巻を山田が担当する形に分担を決め、それぞれビトボル=エスペリエスと密接に打合せながら、実際に作業を開始した。 分担者相互の連絡はメールによることを基本としているが、直接対面して討議するために2018年6月上旬に香川と山田が渡欧し、ビトボル=エスペリエスと綿密な打合せを行った。その際、本研究の企画時に研究協力を要請し、承諾を得ていたユトレヒト大学のテオ・ファベーク教授とエリク=ヤン・ボス准教授の許を訪問し、本研究についての助言を得るとともに、ユトレヒトに保存されているデカルトの文書の調査も行った。 本年度中に行った邦訳・注解の作業によって、バイエの原テキスト自体にテキスト・クリティークの必要性が判明したために、邦訳・注解の作業の前提となるテキストの電子データ化を行うことになった。また、注解については歴史的背景に配慮しながら作成する方針を確定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記「研究実績の概要」に記したように、本年度は当初の予定通り、本研究課題の全訳・注解を遂行するための基本的な枠組みを設定し、それに基づいて作業を進めた。 その作業の過程で、上記のように、当初は予想していなかった原テキストにテキストとしての問題点も出てきたために、テキストの電子データを作成しながら、テキスト・クリティークも行うという追加の作業が加わることになった。 しかし、全体としては当初の予定通りに邦訳・注解の作業が進行しており、特に山田が担当する第2巻についてはほぼ第一段階の作業が終了するところまでになっている。全体的に見ても当初の予定通りにおおよそ研究が遂行されているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者及び内外の研究協力者の連携により第1巻、第2巻の全訳および注解の作業を継続する。相互の連絡はメールによることを基本とする。その間、2019年度には、フランスの研究協力者ビトボル=エスペリエス博士を日本に招聘し、東京(日仏会館)および京都(立命館大学)における講演会を挟みながら、翻訳・注解の共同作業を行い、研究の精度を上げるために研究会を集中的に開催する。 邦訳・注解の作業については全体の草稿を早期に準備することが課題となるが、作成した草稿に関しては正確さを確保するために第三者による校閲が不可欠であると考えられる。そのため、デカルト研究者の小沢明也氏に協力を依頼することにした。同氏は既刊の『デカルト全書簡集』全8巻の翻訳作業に参加した経験をもち、校閲者に適任であり、すでに第一段階の作業が終了している第2巻の部分から、校閲作業に入っていただいている。 今後も基本的には現在遂行中の作業、研究代表者香川、研究協力者山田、ビトボル=エスペリエスの3名の共同による邦訳・注解の作業を継続し、校閲者小沢の協力も得ながら、邦訳・注解の精度をあげる作業を継続する。 なお、本研究によって判明した原テキスト・クリティークの問題から出発し、ビトボル=エスペリエスを中心にフランスにおける新たなフランス語のテキストの刊行が決定しており、その作業にも協力する。
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