研究課題/領域番号 |
18K00103
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
別所 良美 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (10219149)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Basic Income / 持続可能な社会 / 自然の共同所有論 |
研究実績の概要 |
本年度は、ベーシック・インカム(以下BI)の理念の思想史的解明を行い、自然の共同所有という視点から、BIと持続可能な社会との理論的解明を、研究会活動を通して、試みた。 2019年6月4日の日本ベーシックインカム学会・第1回関東地区研究会では、Y. Vanderborgh教授(ベルギー、サン・ルイ大学)の講演「ベーシックインカム―ヨーロッパの現状」およびその後の意見交流から、氏のPh. Van Parijs教授との共著『Basic Income』(2017年)についての理解が深まった。2019年7月28日に名古屋市立大学でのベーシックインカム研究会で、原田忠直准教授(日本福祉大学)から中国伝統の「承包」という地縁的経済システムが、同時に地域のセーフティーネットでもあり、ベーシックインカムとの親和性があるという知見を得た。また、2019年11月9日に開催された日本ベーシックインカム学会・関東地区研究会では、小野誠司氏の「資本主義の変容とベーシックインカム」が報告され、ベーシックインカム導入実現に向けた財政的問題について有益な指摘があった。 2020年2月29日にベーシックインカム研究会(名古屋市立大学)では、小谷英生氏(群馬大学教育学部准教授)「ベーシックインカムは貴族主義的ユートピアではないのか?」、井上智洋氏(駒澤大学准教授・日本BI学会副会長)「ベーシックインカムの必要性と実現可能性-AI・BI・MMT-」という報告が行われた。特に、井上氏からはAIの普及やMMT(モダン貨幣理論)の観点から現代資本主義が内在的にBIを必要とする可能性について重要な示唆を得た。 研究代表者の別所は、「ベーシックインカム理念の歴史的原型―ベーシックインカムの根拠としての土地・自然の共同所有論―」を執筆した(名古屋哲学研究会編『哲学と現代』第35号、2020年2月)。この思想史的研究成果をもとに、内外の研究者およびBI推進者との議論を進めてゆく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2019年度は、BI理念の思想史的研究を行い、国内での研究会開催等を通して、初期BI論における核心として自然資源の共有論を強調する業績を公表したが、予定していた海外の研究者との共同研究を進めることができなかった。新型コロナウイルス問題で、2020年3月に予定していたドイツ等への出張が不可能となったためである。また、2020年度に予定していた日本への海外研究者の招へいと国際シンポジウムに関しても、現在計画は白紙状態である。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の第3年度目に海外からの研究者を招いて国際シンポジウムを計画しており、そのために各年度に無駄な支出をしない方針を取っているため。また、2019年度末に予定していた海外出張が、コロナ危機による海外出張自粛によって不可能となったため。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間の第3年度目に海外からの研究者を招いて国際シンポジウムを計画しており、そのために各年度に無駄な支出をしない方針を取っているため。また、2019年度末に予定していた海外出張が、コロナ危機による海外出張自粛によって,不可能となったため。
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