研究課題/領域番号 |
18K00103
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
別所 良美 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 名誉教授、特任教授 (10219149)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Basic Income / 持続可能な社会 / コロナ禍 / 都市の環境政策 |
研究実績の概要 |
本年度は、ベーシック・インカム(以下BI)の理念の思想史的意義と自然の共同所有という観点を重視して、共同研究および国際シンポジウムを実施し、同時にコロナ危機がBIや持続可能な社会の実現に対する影響について解明しようとした。 2020年10月24日には名古屋哲学研究会の例会をBI研究会との合同研究会として遠隔会議を開催し、廖欽彬(中国・中山大学准教授)氏が報告「植民地期ベトナムの思想状況と哲学の受容」を行った。植民地期ベトナムにおける近代化の動きが、「西洋芸術・東洋道徳」という二項対立的なアジア近代化論を克服する複雑性に配慮する思想史の可能性を示唆している。BI理念の思想史的解明にとって非常に参考になる報告であった。 2020年12月19日の名古屋哲学研究会の例会&B I研究会では、美馬達哉(立命館大学)氏が、報告「新型コロナウイルスと監視文化」を行った。美馬氏は、近代理性に付帯してきた監視・抑圧機能が変容しうるとする。監視には、個人を対象的に操作するフーコー的な「パノプティコン監視」と個人の主体的協力に基づく「モニタリング監視」の2種類が存在し、ICT技術が進歩する中で、後者の監視社会では人々の主体性と自由が確保されうるとし、アフターコロナ社会の肯定的側面が示された。BI理念がめざす個人の自由とアフターコロナ社会のあり方を考察するための重要な示唆であった。 また研究代表者の別所は、「都市の環境政策」という論文(所収、伊藤恭彦他編(2020)『転換期・名古屋の都市公共政策』ミネルバ書房)を発表した。ここでは、時速可能な都市を実現するための環境政策が、範囲を都市域に限定すべきではなく、都市をふくむ生命圏(流域圏)全体のエコロジカル・フットプリント=1を目指す広域協働的政策であるべきだということを、持続可能性の原理論から展開して説明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は、大学での研究教育全般が新型コロナウイルス対策のために影響を受けたが、当該年度の中心的活動として計画していた特にドイツ等の海外研究者との研究交流や国際シンポジウムは準備作業すら進めることができなかった。連絡をとっている海外の研究者自身が本国でリモート授業、リモートワークを行っている状態だったからである。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も、引き続き海外の研究者と連絡を取り、共同研究および国際シンポジウムの計画を進めるが、EU域内ではワクチン接種が進み規制緩和の動きがあるとしても、2021年末ないし2022年初の国際シンポジウム実現は確実ではない。同時に遠隔会議として国際シンポジウムを開催する可能性も探ることにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画において海外出張や海外からの研究者招聘のための予算が、コロナ禍のために執行できなかったため。コロナ感染の状況変化に対応して、当初の研究計画を実施できるように柔軟に対応する。
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