私はこの研究により、普遍主義的な人権と個別主義的なシティズンシップの諸権利とのあいだを架橋しうる哲学的な理路を開拓しようと試みた。標準的な理解によれば、人権は人間が単にに人間であるというだけで有している権利であり、国籍や性別や能力を原理的には問わない。それに対し、シティズンシップにもとづく諸権利のほうは、特定の政治的共同体の市民であるものに対してのみ認められる権利だとみなされる。しかしながら、諸権利の発展の歴史を振り返るなら、権利の享有主体が拡大する場合でも、道徳上の新しい要求が権利として認定される場合でも、人格性や権利内容に関して相互承認をめぐる闘争が生じていることが判明する。
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