研究課題/領域番号 |
18K00106
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
本多 創史 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40528361)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 思想史 / 近代日本 / 優生学 |
研究実績の概要 |
第一に、昨年度上梓した単著(『近代日本の優生学-〈他者〉像の成立をめぐって』明石書店、2022年)に関してである。今年度は、単著で引用した史料に関連する複数の補足史料を収集した。また単著に対する書評が出たので、その応答として短い論文を執筆した。(「市野川容孝さんの書評へのリプライ[本多創史]」、『障害学研究』18号、2023年3月、pp393-399.) 第二に、上の単著の末尾で考察した内容に関して、新たに研究を開始したことである。同書の末尾で、研究者は、次のように述べた。すなわち、人間は、物理的な世界にではなく意味の世界に生きる存在であり、それ故、不断に、意味あるものと意味のないものとを分けざるを得ない。そうした人間から成る社会において、社会の多数派によって意味がないとされた「他者」は常に生み出されることになろう、と。(ただしその「他者」が誰を指すのかは、時代や場所によって変容していくだろう。)このことは、優生学を、特定の時代の特別なものとして扱うのではなく、むしろ、人間とその社会による「他者」措定の最も象徴的な例として取り上げるという含意をもっている。ところで、先哲たちは、正しい社会(国家)/善い社会(国家)について構想してきたが、彼らは「他者」の措定と排除についてどのように考えてきたのだろうか。このことを検討することには価値がある。そこで、取り掛かりとして、ドイツのG.W.F.Hegelの著作を検討してみることとし、一次文献、二次文献のリストの作成を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
西洋の優生学との比較は停滞したままであるから。ただ、研究者自身の視座に進展があり、今後の研究の方向性が明らかになった点では前進した、と言える。
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今後の研究の推進方策 |
G.W.F.Hegelに関する一次文献および二次文献の収集と整理。またA.Smithに関する一次文献の収集。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大により、国内国外での資料収集に制約があったため。
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