研究課題/領域番号 |
18K00108
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
小澤 京子 和洋女子大学, 人文学部, 准教授 (40613881)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 建築の図的表現 / 建築史 / 建築思想 / 建築理論 / 類型学 / 像行為 / テクストとイメージ / 19世紀建築 |
研究実績の概要 |
本研究計画における問い「啓蒙主義時代から19世紀前半に至る時代のフランスを中心とする建築図面における、「類型学」と「イメージを読むこと」の思想史的 意義」は、二つのサブテーマから構成される。2020年度は、過年度に進めてきたサブテーマ1「建築の類型学と図的表現」と、サブテーマ2「思考手段・媒体としてのイメージ」の成果を統合する視点を意識しながら、研究を進めた。また、この科研費を活用して「テクスト、イメージ、空間」という関心を共有する各時代・地域の研究者を招聘し、シンポジウム「テクストを建てる、イメージを歩く」(2020年9月12日開催、登壇者:桑木野幸司、小澤京子、佐藤淳一、鈴木賢子、桑田光平)を開催した。 研究成果公表として、上記シンポジウムにて「歩行によって風景を拓く:ディドロを中心とする18世紀のテクストから」と題した口頭発表を行った。さらに当日寄せられたコメントなども踏まえて加筆修正を施し、論文としたものが「絵のなかを歩くディドロ:「サロン評」の風景画記述と「歩行」のテーマ系」(『和洋女子大学紀要』62号、2021年掲載)である。ここでは、ディドロ「サロン評」の風景画記述における「絵の中を歩く」描写に着目して分析し、18世紀のテクストと絵画経験における「散歩」や「歩行」というテーマ系に、リベルタン(ラディカルな自由主義)的な性質が潜在していることを導き出した。 また、本研究課題と関連するテーマ(建築と都市の図的表現、テクストのなかの建築空間)を敷衍した成果として、論文「架空都市の地図を描く:地図と(しての)テクスト」(『ユリイカ』759、2020年掲載)、同「書物への自己幽閉」、「地図喪失の旅」(いずれも『同時代』掲載)、座談会の雑誌収録「廃墟はなぜ人を惹きつけるのか」(小澤京子、栗原亨、星野藍、三井嶺、『建築ジャーナル』1313号、2021年掲載)が雑誌掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19による国内外出張への規制や、学内事務・教育に掛かるエフォート率の激増から、現地アーカイヴズ調査を実施できず、また研究成果公表のための単著執筆作業にも遅延が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も新型コロナウィルスの国際的な蔓延状況が改善されておらず、短期間に収束する見通しもない。昨年度と同様に、以下の項目を優先して研究を進める。 ・オンラインデータベース(フランス国立図書館Gallica、フランス国立文書館、カナダ建築センター他)や、COVID-19蔓延を受けて特別オンライン公開された資料に主軸を置き、できるところから調査を進める。 ・遠隔会議システムの普及なども活用し、研究者同士の情報交換や研究成果の口頭発表の機会を積極的に設ける。 また、過年度2年間の成果を整理して加筆修正を施し、体系化して単著へとまとめ上げる作業を、当初の計画に追いつくように進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、国内外への出張をまったく実施できず、旅費に多額の残額が生じた。また、当該科研費によるシンポジウムをオンライン開催としたことで、登壇者に旅費を支払う必要がなくなった。それに加え、遠隔授業や学内マネジメントの負担が激増し、本課題研究に割り振れるエフォートが減少したことで、研究計画の遂行そのものが遅れ、計画通りに予算執行することができなかった。 2021年度も、国外出張を伴う調査研究の目処が立っていないことから、資料文献収集とその分析・考察、研究成果公表のための執筆を中心的に行い、本来の期間中に刊行予定であった書籍の完成を目指す。
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