研究課題/領域番号 |
18K00108
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
小澤 京子 和洋女子大学, 人文学部, 教授 (40613881)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 建築の図的表現 / 建築史 / 建築思想 / 建築理論 / 類型学 / 像行為 / テクストとイメージ / 19世紀建築 |
研究実績の概要 |
本研究計画における問い「啓蒙主義時代から19世紀前半に至る時代のフランスを中心とする建築図面における、「類型学」と「イメージを読むこと」の思想史的意義」は、二つのサブテーマから構成されている。サブテーマ1「建築の類型学と図的表現」と、サブテーマ2「思考手段・媒体としてのイメージ」である。2021年度は、引き続きサブテーマ1と2を有機的に結びつけることを意識しつつ、研究を進めた。 具体的には、以下の作業を実施した。一次文献(フランス語原典資料)のうち、特に研究の柱となる「建築の歴史的な比較と類型化」にまつわる部分の抽出と読解を行なった。同時に、二次文献(先行研究、理論的な参考文献)により、同時代の思想の状況把握と、「発見法的(ヒューリスティック)な行為としての、人間と図像とのインタラクティヴな関係」を分析するための理論・方法論の整理を行なった。 また、学術研究業績にカウントできるものではないが、研究の段階で得たアイディアを論文や単著へとまとめる前段階として、また社会へのアウトリーチの目的で、同人誌『同時代』(矢内原伊作、宇佐見英治らにより1948年創刊)の姉妹誌『黒の会手帖』に、以下の論考を掲載した。「いま、身体はどこに?」『黒の会手帖』第13号、2021年7月;「文学散歩というテクスト」『黒の会手帖』第14号、2021年11月;「文学散歩というテクスト(2)」『黒の会手帖』第15号、2022年1月;「ロスト・アンド・ファウンド」『黒の会手帖』第16号、2022年4月。 また、所属機関の教育振興支援助成の一環として、「都市表象」。「テクストと/の中の都市」をテーマとしたイベントや刊行物の編集も実施した。これらは、本研究課題と関連するテーマ(建築と都市の図的表現、テクストのなかの建築空間)を敷衍しつつ、市民社会へのアウトリーチと所属機関の学生教育の二つの目的に資するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度もCOVID-19による国外出張への規制が継続したこと、勤務先での年次・職階の上昇により、学内事務や教育に掛かるエフォート率が増加し続けていること、本研究計画とは異なるテーマの共同研究や分担執筆書籍執筆依頼の負担も大きかったことから、現地調査の延期を含め、研究計画に全体的な遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も新型コロナウィルスの国際的な蔓延状況は継続しており、今後の見通しも不明瞭である。昨年度と同様に、以下の項目を優先して研究を進める。 ・オンラインデータベース(フランス国立図書館Gallica、フランス国立文書館、カナダ建築センター他)や、COVID-19蔓延を受けて特別オンライン公開された資料に主軸を置き、できるところから調査を進める。 ・遠隔会議システムの普及なども活用し、研究者同士の情報交換や研究成果の口頭発表の機会を積極的に設ける。 また、過年度の成果を整理して加筆修正を施し、体系化して単著へとまとめ上げる作業を、当初の計画に追いつくように進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、国外への出張を実施できず、旅費に多額の残額が生じた。また、学内マネジメントの負担の増加や他の共同研究課題の遂行なども重なり、本課題研究に割り振れるエフォートが減少したことで、研究計画の遂行そのものが遅れ、計画通りに予算執行することができなかった。 2022年度も、国外出張を伴う調査研究を実施できるかは不透明であるため、資料文献収集とその分析・考察、研究成果公表のための執筆を中心に行い、本来の期間中に刊行予定であった書籍の完成を目指す。
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