本研究計画における問い「啓蒙主義時代から19世紀前半に至る時代のフランスを中心とする建築図面における、「類型学」と「イメージを読むこと」の思想史的意義」は、二つのサブテーマから構成されている。サブテーマ1「建築の類型学と図的表現」と、サブテーマ2「思考手段・媒体としてのイメージ」である。 2022年度には、これまでの研究成果をまとめ、単著刊行へと結びつけることを意識し、既発表論文の見直しや出版社との協議を行なった。同時に、引き続きサブテーマ1と2を有機的に結びつけつつ、建築の「図的表象」と言語による「ナラティヴ」に着目し研究を進めた。2022年度の研究成果としては、フランス19世紀の社会思想家シャルル・フーリエの「理想的共同体の建築構想」における図的表現の変遷と、フーリエ自身の思想の変化、および彼の弟子たちによる「介入」や「変容」の関係を調査・分析したことが挙げられる。関連する研究業績には、口頭発表「フーリエの建築構想」(シャルル・フーリエ研究会、2022年12月)がある。この発表成果は、当日のディスカッションを通して得られた成果や、その後のアーカイヴ調査も加えて改稿したものが、2023年度刊行の共同執筆書籍に論文として収録される予定である。 また、研究課題と緩やかな関連性を持つ以下の文章(批評的エッセイ)を、研究成果の社会へのアウトリーチのために、一般文芸誌に寄稿した。エッセイ「小さな部屋のポエティーク」(『ねむらない樹』第9号、2022年8月);随筆「小さな部屋についての思索」(『群像』77(9)、2022年8月)。
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