研究課題/領域番号 |
18K00110
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小野 文 慶應義塾大学, 理工学部(日吉), 准教授 (00418948)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バンヴェニスト / 発話行為 / 言語思想 |
研究実績の概要 |
<2018年度の研究実績概要> 本年度は研究初年度であるため、資料調査を進めながら研究全体の作業計画をたて、研究に着手した。 ①資料調査面:夏期休暇を利用してパリの国立図書館・リシュリュー草稿館にて資料調査を行うことができた。そこでE.バンヴェニストの草稿の一部分を閲覧し、また書写できたのは大きな進展だった。とりわけ『インド=ヨーロッパ諸制度語彙集』のもととなったコレージュ・ド・フランスでの講義録(1945-1950年)が閲覧・筆写でき、バンヴェニストが「話す」行為と「法」「宗教」的制度とを緊密に結びつけて捉えていたことが確認できた。またバンヴェニストの草稿資料研究を専門とするフランスの研究者と打ち合わせをすることができ、草稿全体の概要をしめすカタログを入手することができた。 ②資料読解/分析:上記の資料の筆写を読み解いている段階である。特に1930-40年代にナチスドイツに思想的な影響を与えたインド=ゲルマン学に対して、比較言語学者バンヴェニストが見せた抵抗の跡を、上記の講義録に読み取ることができるかもしれないと考え始めている。 ③研究成果発表面:バンヴェニストの「ことばにおける主体性について」が日本においてどのように受容されたかについて研究成果を論文集に発表した(フランス語)。またバンヴェニストにおける「話す」行為が、中動態や前置詞の問題とどう結びつくのかを検討し、イタリアの学術雑誌に送付した(フランス語・2019年度に出版予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の申請時当初の計画では、2018年度の資料調査はコレージュ・ド・フランスを中心に行い、パリ国立図書館での資料調査は2019年度にする予定であったが、幸運にも国立図書館に保存されているバンヴェニスト草稿資料のコピーに関する権利をもつフランスのアカデミー会員とコンタクトが取れ、コピー許可が得られたため、パリ国立図書館での資料調査を中心に進めることになった。得られた結果は非常に満足のいくものだったため、当初の計画とは資料調査目標の順序が違うものの、おおむね順調に推移していると判断できる。また2件の論文をフランス語で執筆できたため、研究成果も順調に上がっている。
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今後の研究の推進方策 |
・資料調査面:2018年度と2019年度の資料調査の場所をおおむね入れ替えたため、2019年度はできればコレージュ・ド・フランス文庫で調査を行いたい。またバンヴェニストの伝記的な側面と思想面の相関性を調べるために、パリ市内(ラビ養成校)や近隣の資料館(オルレアン・ヴェルディヴ資料館)、スイス・フリブール大学図書館等の調査を行いたい。 ・研究面:ひきつづきバンヴェニストの言語思想のなかに、「話す」行為と言語学的分析(特に前置詞と中動態」)の関わりを求めていく。またバンヴェニストの生涯と思想の関わり、特にインド=ヨーロッパ祖語研究と反ゲルマン思想の関わりについて、研究を深める方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文を当初の予定の日本語ではなく、外国語で発表したため、予想以上に校閲代がかかることが分かり、40,000円の前倒し支払請求を行ったが、結果的に9,155円余剰分が出ることになった。次年度は外国語論文の発表予定はないため、別の項目(物品代や旅費)に回して使用する予定である。
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