本研究は、日本社会の公共性の構造や、歴史学者網野善彦の「無縁」論にも通ずる特有の「神観念」のありようの解明を目的として、無教会キリスト教を中心的対象としつつも、より広く、「無所属」「無党派」を標榜する思想を、歴史貫通的な問題史として掘り下げていくことを課題とする。 2020年度は、6月13日開催予定の第35回内村鑑三研究セミナー(於・立教大学)での報告を依頼され、本研究課題と同題の「内村鑑三の「無教会」と日本思想史の文脈における「無所属」「無党派」の研究」の論題にて、当研究課題の中間報告の意味を持つ口頭発表が予定されていたが、COVID-19によるコロナ禍の影響で開催中止となり、一年延期となった。第35回内村鑑三研究セミナーは、結果として、研究期間終了後の2021年6月12日(土)14~17時にZOOMによる遠隔会議として実施されることになった。 同セミナーの開催チラシに掲載された発表概要は以下の通りである。 「本研究は、無教会キリスト教を中心的対象としつつも、より広く、無所属、無党派 を標榜する思想を、歴史貫通的な問題史として掘り下げる。足尾銅山鉱毒事件に取り組んだ内村鑑三の理想団運動は、なぜ挫折したのか。近くは2015年、自由と民主主義のための学生緊急行動は、なぜ短期間のうちに失速したのか。そこには、新たな連帯の可能性と、根無し草的脆弱性とが、同時に観察可能だ。無教会から透けて見える日本社会の公共性の構造、また歴史学者網野善彦の「無縁」に通ずる特有の神観念のありように迫りたい。」 この研究発表は、加筆修正のうえ、2021年度発行予定の、学術雑誌『内村鑑三研究』に投稿・掲載の予定である。なお、その他の研究成果としては、本課題のキーワードである「公共」に関して、「三つの「新しい中世」と公共圏──一九九〇年代の歴史学的思考と現在」が2020年5月に刊行された。
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