研究課題/領域番号 |
18K00113
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
上久保 敏 大阪工業大学, 工学部, 教授 (20309173)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 日本文化講義 / 思想善導 / 教学刷新 / 教学局 / 大倉邦彦 / 大倉精神文化研究所 / 国民精神文化研究所 |
研究実績の概要 |
帝国大学、官立大学、高等学校、専門学校等の文部省直轄諸学校および私立の大学・専門学校等で昭和11~20年度に実施された「日本文化講義」の全容を解明し、文部省・教学局によって進められた戦時期における教学刷新事業の具体的一面や思想善導の実態を明らかにすることが本研究の目的である。 2020年度については新型コロナウイルス感染症への対応として本務校より出張自粛要請が出たこともあり、それまで継続的に行ってきた大学図書館や大学アーカイブズ(大学の歴史館、資料館、文書館、大学史編纂室など)での各大学所蔵諸資料の調査や「日本文化講義」の実施事例等の資料収集を行うことができなかった。 このため、「日本文化講義」を担当した学者・知識人に焦点を当てた研究を行うこととし、2020年度は大倉精神文化研究所の創設者であり、実業家にして教育者、思想家でもあった大倉邦彦を取り上げ、在野の教学刷新事業実践者としての側面に着目するとともに大倉が行った「日本文化講義」について考察する論文「大倉邦彦と「日本文化講義」―在野の教学刷新実践者とその思想善導講義―」を大倉精神文化研究所の紀要に発表した。具体的にはこの論文の中で、大倉精神文化研究所を通じて大倉が行った教学刷新事業や大倉が展開した教学刷新論に焦点を当てるとともに、北海道帝国大学や神戸高等工業学校、東京高等商船学校で大倉が行った日本文化講義の内容を詳細に検討し、大倉にとって日本文化講義がどのような意義を持つことになったかについて論及した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまで各大学の図書館やアーカイブズに出張し、「日本文化講義」を中心とする戦時期の教学刷新事業に関する各大学の所蔵資料を継続的に閲覧調査、収集してきたが、2020年度は新型コロナウイルス感染症への対応として本務校より出張自粛要請が出たことや不慣れなオンライン授業への対応もあり、閲覧調査や資料収集をほとんど行うことが叶わず、これまでの収集データの入力や日本文化講義を担当した学者・知識人の思想面の特徴や「日本文化講義」の内容の考察に十分な時間を割けなかった。 こうした事情により本研究課題の進捗は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は大学図書館や大学アーカイブズへの出張による資料調査・収集を再開し、これを精力的に進めていくとともに収集済みの昭和17年度以降における帝国大学、官立大学、高等学校や専門学校、実業専門学校などの文部省直轄諸学校における実施事例と私立大学・専門学校のデータ入力作業を進め、日本文化講義の「実施事例データベース」の拡充を図っていく。それにより実施事例について専門分野ごとの分類を行い、経年による分野・トピックの変化が分析できる体制を整えていきたい。 また、「実施事例データベース」を活用することにより「担当講師データベース」の作成にも着手し、専門分野や日本精神派などの思想傾向によって担当講師を分類することを通じて講師に関する分析を行う上で必要となる研究土台の整備を進める計画である。 2021年度においては、これらのデータベースを駆使することで、各年の日本文化講義に占める日本主義・日本精神を重視する「日本精神派」の担当講師の割合など、日本文化講義の思想面の変化を考察するとともに、日本文化講義を担当した個々の学者・知識人にも着目し、その思想面の特徴と日本文化講義の関係についても考察を行うことにより日本文化講義の全容解明につながる何らかの示唆を引きだしたい。 なお、研究成果については基本的に論文の形態で発表していく所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
<次年度使用が生じた理由> 次年度への繰越金が生じたのは、2020年2月以降の新型コロナウイルス感染症対応として本務校より出張自粛要請があったため、出張調査を行うことができず、助成金の使用が文献資料の購入等に限定されることとなり、当初見込みよりも出張旅費の支出が大幅に少なくなったことが主な理由である。 <使用計画> 文部省・教学局の教学刷新事業が戦時期の各大学における教育・研究体制に及ぼした影響を知るために各大学の百年史などの大学沿革史を購入するとともに日本文化講義を担当した個々の学者・知識人の著作についても購入する予定である。また、次年度においても引き続き日本文化講義の全容解明に重きを置くため、所属大学図書館を通じて各大学に日本文化講義関係文書の閲覧申請を行い、現地での閲覧調査・文書撮影による資料収集のため、国内各大学への出張旅費に助成金を充当する計画である。
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