本研究は、古来我が国に広く行われ現在でもよく知られている「天道信仰」について、日本のみならず東アジア思想との影響を跡付けることを目指す試みである。日本における「天道」といえば現在は「おてんとうさま」を太陽と考えることが多いが、調査によれば単なる太陽ということではなく、神道・仏教・陰陽道・道教などの複合的な宗教概念であることが浮かび上がってきた。とりわけ道教や陰陽道などとの関連を調査していくうちに、琉球の「天道」祭祀や大陸の「天道」観念との影響があることが明らかとなった。 本研究は、以上の調査結果を踏まえて、特に天道信仰のルーツを沖縄(琉球)から大陸へと遡及して跡付けることを目的として実施した。 2018年度・2019年度に、台湾・韓国にて大陸の動向についてフィールドワークおよび、文献資料の収集をすることを得、大陸の道教および陰陽思想、民間信仰のなかに「天」ないし日本の「天道」につながる思想が散在していることを跡付けることができた。 2020年度・2021年度は、研究計画に従い国内の天道信仰の、道教・陰陽道とのかかわりを郷土資料や文献資料から検討することと併せて、沖縄の天道信仰について現地調査を行うことを計画した。以上を踏まえ、2021年3月に沖縄(琉球)の調査および資料収集することを予定していた。沖縄(琉球)の現地調査は、誠に残念ながら新型コロナウイルス感染拡大防止のため断念せざるを得なかったが、琉球大学図書館ならびに沖縄歴史民俗資料館、那覇市歴史博物館の協力を得て関連資料を入手することができ、琉球の天道信仰について資料調査を遂行し、大陸の「天」観念との関連について見通しをつけることができた。
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