研究課題/領域番号 |
18K00118
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
福江 良純 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (30710751)
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研究分担者 |
山田 修 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 准教授 (30571723)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 石井鶴三 / 木彫 / 近代彫刻 / 木取り / 造型論 / 立体概念 / 木曽馬 / 基本形 |
研究実績の概要 |
本年度は当研究課題の2年目であり、採取する研究データの充実と次年度に向けたその系統化の下地を作ることが目標であり、概ね計画通りの実績を上げることができた。しかしながら、年度内の完了が予定されていた藤村像関連作品第一作目石膏原型の形状計測について、所蔵美術館のやむを得ない事情により見送りとなった。その一方、藤村像関連事業木曽馬制作事業については、論文刊行という想定以上の成果を挙げている。 本年度の業績は大きく次の3点に分けて整理することができる。 (1)木彫藤村像および木片計測成果について:木彫島崎藤村像(第2作目)の計測を東京藝術大学にて行った。木片33個を研究分担者山田修氏(東京藝術大学)の元に運び、3D計測を行った。現在それらの画像化を順次進行中である。(2)木彫藤村像関連史料のアーカイブ化に関する成果:木曽教育会に保存される2体の島崎藤村像制作工程記録写真集の図版整理(記録基づく図版の時系列確認)を行い、それをデジタルデータにおいても保存した。採取した図版のデータは、信州大学附属図書館研究第9号に翻刻資料として投稿した。これらの制作工程写真は、大判のガラス乾板によるもので、乾板及び紙焼きプリントに照合用の番号が振ってある。こうした撮影当初の順序が乱れており、今回170枚弱の写真図版及び乾板すべての照合整理を行った成果は大きい。(3)藤村像関連事業木曽馬制作事業に関する成果:石井鶴三藤村像制作期間中に行った木曽馬制作事業について制作現地に赴き、木曽馬関連の資料や聞き取りによる調査を行った。これらの成果についても信州大学附属図書館研究第9号に論文を投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の中心的業務である石井鶴三の島崎藤村木彫像関連の作品および制作余材(木片)のデジタルデータ化は大半の計測を終了し、そのデータの画像化を順次進めているところである。残された作品および木片は、東京芸術大学美術館所蔵の石膏原型1体、木曽教育会所蔵の木片(小)42個である。本研究課題の重要性は、「基本形」と命名された木取りが最初に生み出すソリッドの構造体が、いかに近代彫刻の方法論上に意義があるかを検証するところにある。その意味に照らすなら、基本形に関わる木片のデータ化は完了しており、そのCG画像加工と空間配置についても半ばまで進行している。現在までの調査によって期待できる成果にはすでに十分なものがあり、状況的に概ね順当と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
残された要計測作品1体と木片42個については、10月までに計測業務を終える。それと並行し、計測済みの各種デジタルデータのCG化を行うとともに、作品および主要木片(基本形制作相当分)の空間配置とアニメーション化を進めていく。また、木片の空間配置とともに、その内部に想定される基本形の形状データを割り出し、その3D画像化はもちろん3Dプリンタによるアウトプットについても計画している。こうしたデジタルデータによって得られる造形理論上の知見には実に新規性ある豊かなものが期待され、その近代彫刻における意義と機能を論文としてまとめていく。その際に、基本形の3D樹脂モデルは本研究をまたずして作製できないものであり、研究推進上重要なポイントとして着実な作製計画を立てていく。また、デジタル形状計測データ、CG画像データ、CGアニメーションデータなど、本研究で得られた貴重なデータの保存と活用のアーカイブシステムについても可能な範囲で検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の主要業務は、作品および制作余材(木片)の3Dデジタル形状計測およびそのCG画像化であった。この業務の実行は研究分担者の役割であったが、この業務には想定外の時間と労力を要することが想定される。そのため、年度当初研究分担者に割り当てていた額を超える経費が発生した場合に備え、研究代表者分を使用せずに保存していた。そうしたところ、調査作品の収蔵美術館(東京藝術大学美術館)のやむを得ない事情により予定していた作品1体についての計測がキャンセルとなるなどしたため、結果として、追加経費の発生は無かった。このため当該年度内に研究代表者分の所要額が残ることとなったが、この予算については、今年度実行できなかった計測業務等の実行に充てる予定である。
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