研究課題/領域番号 |
18K00119
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
外山 紀久子 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (80253128)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エネルギー / 気 / 実験音楽 / ポストモダンダンス / 身体論 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、主としてこれまでの研究成果をまとめ、出版計画を具体化する作業とともに、不足分の補いに努めた。 舞踊・音楽・アート等の複数領域をまたぐ「拡大ダンス」の実例として「歩行」の問題に着目して前年度行った日本科学協会の科学隣接領域研究会での報告をもとに、アンソロジーのための原稿を執筆した(研究成果の図書参照)。やはり前年度に参加した富山大学芸術文化学部主催のオンライン研究会での口頭発表の一部を、冊子およびオンラインの報告書掲載用に整理した。さらに、複数の出版社から書籍刊行のオファーを受けており、編集者とオンラインでの会合を重ねた結果、暫定的ながらタイトル、構成、章立て、執筆スケジュールなどを決め、執筆に着手した。 「気」の身体論・宇宙論を古代思想の命脈のみならず、「拡大ダンス」の文脈でより実質的な議論として展開するとともに、近代の主体概念の再検討に連なる「聴く」身体(受信型身体)の種々相について考察する上で、①ポストモダンダンスの成立時、他のパフォーマンス系のアートにも多大な影響を与えたジョン・ケージ、ケージの没後カニンガム・ダンス・カンパニーの音楽監督を務めた小杉武久、その他ラ・モンテ・ヤングやモートン・フェルドマン、ポーリン・オリヴェロスらの実験音楽の思想と方法論を調べ、②サウンドスケープ(マリー・シェーファー)、サウンド・アート、さらには電磁波を素材とする「エネルギー・アート」(ダグラス・カーン)について、文献やデジタル・アーカイヴを利用して調査・検討した。 ケージやカニンガムと並んでポストモダンダンスに重要な貢献をしたアナ・ハルプリンのもとで長年助手を務めた平岡智子氏、ポストモダンダンスのオピニオン・リーダーであるイヴォンヌ・レイナーの作品を日本でも上演・展示した中島那奈子氏他によるオンラインのレクチャーやワークショップに参加し、出張調査の不如意を補った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
元々の計画では令和3年度が本研究の最終年度であったが、主として健康上の理由(現在も通院治療中)で1年延長していただいた。 また、研究対象がエンドレスに拡大してしまい、当初の範囲を越えて考察すべき問題が噴出した(広げ過ぎた大風呂敷が破れてしまった)ということも遅れの理由に入ることは否めず、反省している。
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今後の研究の推進方策 |
著書の出版に向けて不足している部分に集中する。 前年度に途中になってしまったポストヒューマン&アニマル・スタディーズ、バイオ・エステティクス関連の文献研究、心身調整術(特に武術、体操)の実践的調査研究、ポストモダンダンス(および同時代のアートの一部)が問い続けた日常的身体とパフォーマンスの身体との異同、中動態論を経由した「踊る身体」の脱主体化、といったあたりを補う。 また、単独で暴走しがちな研究の問題点を補うために、(対面、もしくはオンラインで)シンポジウムないし研究交流会を開催し、フィードバックを得る機会とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大と健康問題のため、当初予定していた研究計画の完了が遅延した。一年延長していただいたので、不足資料の入手、データのデジタル化、シンポジウムの開催費用等に使用する。
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