「気」という中国古代及び日本の前近代から継承された概念に着目し、1960年代・70年代のポストモダンダンスの再解釈を中心にその思想的背景と意義を多面的に捉え、狭義の芸術舞踊を超えた「拡大ダンス」の実践として考察する視点を提示した。関連して、現代アートにおいて近代の「自己表現としての芸術」からポスト近代の「自己変容のための芸術」への移行、さらにテクノロジーの加速度的な進化とともに「プロダクト」(作品)中心の芸術観から「プロセス」(生成の現場の経験)重視への転換が認められると考え、そこに現れてくる芸術の自己治療的機能が、心身及び環境の調整術としての気の身体論の系譜によって明らかになることを示した。
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