研究課題/領域番号 |
18K00122
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
飛嶋 隆信 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60302915)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イタリア / ファシズム期の美術 / エトルリア美術 / マルゲリータ・サルファッティ / ネオ・ユマニスム |
研究実績の概要 |
2021年度も、欧州でコロナウイルスの感染拡大の状況が続いたため、前年度に続き、予定していた渡航調査を断念せざるを得なかった。そのため、デジタル化され、オンライン上で閲覧可能な、フランス、イタリア、ドイツの書籍や雑誌に関する調査を行う一方、所属する東京農工大学の図書館を通じて、ファシズム期のイタリア美術界に関するものを中心に輸入書籍を購入し、ヴァルデマール・ジョルジュとイタリア美術界との関わりについて調査を進めた。 その成果を、12月18日(土)14時から16時にかけてオンライン上で開催された第171回イタリア言語・文化研究会12月例会にて「ヴァルデマール・ジョルジュの美術批評とイタリア美術界」の題名で発表した。 本発表では、過去の研究発表や論文では詳細に触れることができなかった、ファシズムに対するヴァルデマール・ジョルジュの傾倒ぶりや、ムッソリーニ政権下で影響力を持ちながら、1930年代後半に失墜した美術批評家マルゲリータ・サルファッティとの接点や両者の考え方の差異について論じた。 また、当時のヨーロッパ諸国の近代美術史や美術批評で、古代ギリシャ・ローマ美術を始めとする「古代」への参照が盛んであったことを取り上げ、イタリアについては、画家マリオ・シローニをはじめ、古代ギリシャ・ローマ以前のイタリア固有の起源としてエトルリア 美術に注目する動きがあったことにも触れた上で、フランスとイタリアの地中海文化圏を軸とする新たなヨーロッパ文化の構築を目指す一方で、西洋美術に対する東方文化の影響を強調したヨゼフ・シュゴフスキーの研究にも注目し、ロシア出身の画家達を含め多様な作風の画家を包含する「ネオ・ユマニスム」を提唱したヴァルデマール・ジョルジュの批評活動の特異性にも言及した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の対象となる美術批評家、ヴァルデマール・ジョルジュの活動について、イタリア美術界との関係については、資料の収集をある程度進め、その成果を論文や研究発表の形で公表することができたが、コロナウイルスの感染拡大状況による渡航の制限もあり、当初予定していたミラノでの資料収集を行えずにいる。また、オーストリアの美術史家ヨゼフ・シュゴフスキーに関連する調査についてもウィーンでの資料調査を実施できていない状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、コロナウイルスに関する欧州各国の規制緩和を考慮しつつ、これまで実施できなかった渡航調査を行い、かつ、輸入書籍も入手し、最終的な成果報告に必要な資料の収集を試みる。 現在、8月にフランス・パリの国立図書館にてヴァルデマール・ジョルジュおよび同時代のフランス美術史・美術批評界に関する資料の追加調査を行い、国立公文書館にて、ヴァルデマール・ジョルジュに関わる史料も参照する予定である。 また、12月末から1月初頭にかけて、イタリア・ミラノの美術史図書館にてファシズム期のイタリア美術界に関する調査を行うことも企画している。 ヨゼフ・シュゴフスキー関連の調査については、3月末頃にウィーンでの調査を検討しているが、上記二つの調査を最優先とし、時間と予算の両面において困難な場合には、ウィーンへの渡航は断念し、入手可能な書籍や文書を用いて報告書の完成を行う可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
欧州におけるコロナウイルス感染拡大の状況に伴い、当初予定していた複数回の渡航調査を実行できなかったために次年度使用額が生じている。 2022年度は、フランス・パリ、イタリア・ミラノでの資料調査を優先的に行った上で、可能な範囲内で、ウィーンでの資料調査も実施する予定である。 また、研究に必要な書籍の購入にも使用する。
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