2023年9月23日(土)から9月27日(木)までイタリア・ローマに渡航(28日帰国)、ローマ国立中央図書館(Biblioteca nazionale centrale di Roma)および考古学・美術史図書館(La Biblioteca di Archeologia e Storia dell'Arte)の2館にて、ヴァルデマール・ジョルジュのイタリアにおける活動に関する書籍、雑誌等の資料調査を実施した。 同調査での成果をもとに、ヴァルデマール・ジョルジュの美術批評における「ローマ」の意義を分析した研究論文(査読付)「ヴァルデマール・ジョルジュの『ローマ』ー両大戦間期美術批評における伊仏関係の一事例について」を、『早稲田大学イタリア研究所 研究紀要 第13号』(2024年3月発行)に発表した(25-46頁)。同論文では、1930年代にイタリアのファシスト政権に接近したヴァルデマール・ジョルジュの思想と行動について、当時のイタリア考古学会において20年代から始まっていた、統一国家イタリアの歴史にとっての古代ローマの重要性を強調する動向が、1938年の「ローマ性のアウグストゥス展」開催に至るまでの経緯との関連もふまえて分析した。ヴァルデマール・ジョルジュが夢見た伊仏を軸とした「地中海文化圏」の設立という理念は、かようなローマ礼賛に対応している一方、ポーランド系のオーストリアの美術史家ヨゼフ・シュゴフスキーに対する両儀的な態度にも伺えるように、多様な要素が混交した文化のあり方に興味を抱き続けたヴァルデマール・ジョルジュは古代ローマの多様性にも重ね合わされていたのであり、自身が提唱し、ファシズムに結びつけようと試みた「ネオ・ユマニスム」という概念もそうした多様性を孕んでいたことを指摘した。
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