研究課題/領域番号 |
18K00124
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
山下 薫子 (坂田薫子) 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (90283324)
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研究分担者 |
甲斐 万里子 和洋女子大学, 人文学部, 助教 (30803689)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 園田清秀 / ピアノ指導法 / 西洋音楽受容史 / 音楽教育史 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,園田清秀(1903-1935)とその息子でピアニストの高弘(1928-2004)の遺した史資料を中心に置き,これを音楽学及び音楽教育学の視点から吟味することによって,大正期から昭和初期における日本のピアノ演奏法や指導法がどのように発展したのか,その一端を明らかにすることにある。 令和2年度は,引き続き東京藝大の音楽総合研究センターに寄贈された清秀と高弘の資料整理を行うとともに,前年度までに収集した資料の分析と考察を進めた。 先行研究によると,清秀はフランスに留学したとされるが,その具体的な内容は詳らかにされてこなかった。本研究においては,前年度までの文献調査と聞き取り調査によって,当時のフランスにおけるピアノ演奏指導の方向性をつかむことができた。しかし,清秀の足跡を裏づける直接的な情報は得られていない。そのため,フランスで師事したとされるカサドシュ(Robert Casadesus, 1899-1972)との接点やそのレッスンの内容,フランスでの生活や活動については,いまだ明らかにできていない。 しかし,高弘の資料を整理する中で,清秀のフランス留学と関係する一次資料が複数,その中に紛れ込んでいることが分かった。加えて,パリ留学時のキーパーソンとなる人物を見つけることもできた。さらに,清秀の指導については,その孫弟子に当たる人物を探し当てることができている。 当初の予定では,今年度が本研究の最終年度に当たっていたが,コロナ禍にあって,思うように出張や聞き取り調査を進めることが叶わなかった。そこで,研究期間を延長し,次年度,新たに清秀やその指導の実際を知る人物に聞き取り調査を行い,彼が音感指導とピアノ指導の方法論を着想した経緯とその具体について,継続的に追究したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の前半は,COVID-19への対応に追われることが多く,また緊急事態宣言下では,大学への入構や出張が制限されるなど,資料整理や聞き取り調査などを予定どおり実施することができなかった。8月末以降,資料のデータ入力作業を再開し,一定の成果をあげることができている。
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今後の研究の推進方策 |
清秀のフランスでの足取りをつかむキーパーソンや,清秀の孫弟子の存在にたどり着いたことにより,研究の視界がようやく開けてきた。今後は,コロナ禍にあっても実現可能となる聞き取り調査の方法を工夫し,着実に情報を収集して,次年度内に成果があげられるようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の対応により,対面での学会がことごとく中止になり,また,本務校の行動指針によって出張が制限されるなどして,旅費を使用しなかったため,次年度使用額が生じた。 次年度も,出張については,海外,国内ともに制限が続くものと予想され,各学会の研究大会も早々とオンラインに切り替えられている状況がみられることから,旅費を他の項目に移し,聞き取り調査や資料整理の謝金を手厚くしたいと考えている。
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