本研究は、前世紀末以降進展中の美学の「感性論的転回」に掉さしつつ、「感性」に関連する重要な概念であるEmpfindnis(「感覚態」「再帰的感覚」などと訳される)に系譜学的な検討を加えた。後期フッサールにおけるEmpfindung(知覚の質料としての感覚)とEmpfindnis(自己受容的感覚)との区別を参照点としつつ、18世紀のテーテンスやメンデルスゾーンにおける用例を文献資料に即して検討し、この概念が18世紀から20世紀前半の思想家たちにおいて、どのように用いられ、それぞれの思想体系内でどのような役割を担い、そして、思想家間相互でどのような関係にあるのか、という問題を考察した。
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