研究課題
基盤研究(C)
この研究は、文化伝承の「中央」から「地方」への伝播、「地方」への定着と維持、「地方」の独自性の創出の問題を、宮廷芸能の雅楽を例に考察するものである。具体的には、関西と近いが、独立した気風と経済力を持つ名古屋圏の雅楽を例に、「中央」から伝播・定着した雅楽が、地域の特性や歴史的背景を反映しつつ、その伝承や社会的意義を継続 、あるいは変化させてきたのか(変化し続けているのか)を、歴史的史料と関係者への聞き取り調査、現地の行事の取材によって検証した。
日本伝統芸能
本研究の学術的な意義は、歴史的には関西の禁裡楽人、現在では東京の宮内庁楽部のモノポリー的な文化と思われている雅楽の伝承が、実は古くから中央以外の地域でも伝承、実践され、地域の実情に合わせて様々に変容、解釈されてきたことを実証的に明らかにした点にある。また本研究を貫く、「複数の雅楽伝承」に対する開かれた寛容な視点は、今後の雅楽伝承の存続と発展に大きく寄与するという点で、社会的に重要な意義を帯びている。