「ディアスポラ」を離れたアルゼンチン・ユダヤ音楽家に関する民族音楽学的研究

2020 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 18K00129
• 研究機関: 香川大学
• 研究代表者: 川端 美都子 香川大学, 経済学部, 准教授 (20749858)
• 研究期間 (年度): 2018-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: アルゼンチン＝ユダヤ / ディアスポラ / 民族音楽学 / メディアスポラ / ラテンアメリカ＝ユダヤ研究

研究実績の概要

本研究の目的は、アルゼンチン・ユダヤ音楽家による現実社会とメディア上での音楽活動を追うことで、彼（女）らが、音楽を通して様々な差異を乗り越えていく様を民族誌的に分析し、考察することである。実際の計画では、米国におけるアルゼンチン・ユダヤ・コミュニティに関する文献調査や、主にカリフォルニア州ロサンジェルス市内におけるアルゼンチン・ユダヤ音楽家の活動、及びアルゼンチン・ユダヤ・コミュニティの調査を予定していた。また、イスラエルでの民族誌的調査も実施する予定であったが、感染症の拡大に伴い、調査内容をデジタル・エスノグラフィーへと移行せざるを得なくなった。そのため、当該年度は、昨年度までに収集したデータの分析と、新型コロナ感染症拡大という状況下における、オンライン上でのアルゼンチン・ユダヤ音楽家たちの活動に注目することになった。
従来、ソーシャルメディアは、「トランスナショナル」で「平等主義」（egalitarian）なプラットフォームであるとされてきた。しかし、Zoomを利用したユダヤ音楽ライブ配信・参加を観察する過程で、本研究が理論化を進めている「メディアスポラ」が、単にメディア上におけるディアスポラ間の結合という意味ではなく、帰属、接続、分離の接合過程と捉えることができるのではないかと考察しなおすこととなった。この点に関しては、データがまだ必要であるため、現在、ミュージシャンたちにインタビューを実施している段階である。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当該年度は、本来ならば科研費による研究を一時停止した状態で、在外研究としてアメリカ合衆国のペンシルバニア州立大学へと１年間赴く予定であった。しかし、新型コロナ感染症の拡大と、ブラックライブズマター運動の激化、及び大統領選挙に伴う暴動の増加に伴い、半年間の延期の上、急遽、在外研究がキャンセルになるという事態となった。また、感染症の拡大により海外渡航が禁止となったこともあり、本研究の目的を遂行するために必要な研究を実施すること自体が困難であったため、研究の進度が遅くなった。

今後の研究の推進方策

科研費最終年度の延長をすることにより、昨年度に実施できなかった調査研究を行う予定である。海外渡航が引き続き困難である場合は、調査方法を完全にデジタル民族誌的調査方法へと移行することを検討している。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナ感染症拡大により、海外渡航が不可能であったため。
今年度は、海外渡航が可能になった場合は、費用をその調査に充てる予定である。もし、不可能であった場合には、海外での学会発表、もしくは成果発表の際の英文校正費用として使用する予定である。