研究課題/領域番号 |
18K00134
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
関村 誠 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (20269583)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 感覚 / 形 |
研究実績の概要 |
プラトンの対話篇の独自な読解に依拠して美学思想を展開した新プラトン主義哲学者プロティノスにおける感覚(アイステーシス)の機能の理解を踏まえた上で、「像」などの現象様態や「痕跡」の位置づけとそれを把握する魂の働きについて明確化し、感覚とそれに触発された知的機能の働きの諸局面における現れの受容をめぐる議論に関して、プロティノスがいかに独自の思索展開をしているかについて、テクスト批判を遂行して見極めることが本研究の目的である。そのために、本年度においては、昨年度の『エンネアデス』第一論文「美について」における「形」の位置づけの考察に加えて、そのプラトンのイデア論との関係、また感覚機能との関係について、他の論文も参照しつつ考察した。プラトンのイデア論の議論とは異なる点として、プロティノスは魂の機能をより細かく分析しており、単に感性と知性という分け方のみではなく、それらを連携する働きを動的に捉えようとしていることがわかった。魂の働きの側面から見ると、プロティノスにおける芸術の位置づけは、感覚物に関わる活動というのみではなく、感覚的および知的に美の形の受容と創造に携わる活動として捉えることができる。しかし、その結果、プロティノスにおける見える形と見えない形の関係は、プラトンにおけるそれらの関係よりもよりダイナミックな観点から捉えるべきことがわかり、痕跡概念が魂の活動性との関係でさらに考察されるべきであることが意識された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年3月に出張を組み込もうと考えていたが、勤務先が変わったこと、またコロナウイルス感染拡大の影響で海外出張ができなかった。したがって、海外の研究者との意見交換、研究報告した上で彼らの意見をもらうことなどができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
第1論文「美について」や第31論文「直知される美について」の美や芸術創造について言及された議論だけではなく、さらに魂の感覚機能に対する捉え方が組み込まれた思索が展開されている第19論文「徳について」および第53論文「生命あるものとは何か、人間とは何か」、さらには、第27, 28, 29の一連の論文「魂の諸問題について」においても、像、形、痕跡の概念がどのように組み込まれているかを考察していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
勤務先の変更、およびコロナウイルス感染拡大のために、3月に予定していた海外出張に行くことができなかったため、旅費を使用することができなかった。次年度では、海外出張を計画する予定であるが、コロナウイルスのために出張ができない場合は、研究のための物品費にあてる。
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