研究実績の概要 |
プロティノスの第1論文「美について」において徳と美の関係が痕跡の概念と関連づけて展開されていることから、第19論文「徳について」に着目し、その解釈を遂行した。このテキストの中で痕跡の果たす役割を明確にし、その成果をイタリアのシラクサで開催されたSixth Interdisciplinary Symposium on the Heritage of Western Greece (with special emphasis on arete: virtue, excellence, goodness)において、"Notions of Impression and Trace in Plotinus’ Treatise On Virtues"というテーマでオンラインにて発表した。その結果、痕跡の機能の考察を通じて、徳と美がプロティノスにおいて緊密に関係していることを確認でき、徳を市民的なものと高度なものに二分している思考の意味を理解することができた。 また、プラトンにおける知性で捉えられるものと感性で捉えられるものとを関係づける分有の問題について、とりわけ『パイドン』のテキスト解釈を基盤として、『国家』でより発展した思考展開を、そこで用いられている型の概念と結び付けて考察し、さらにプラトンの分有概念をもとに理論展開しているプロティノスの美についての理論を痕跡の機能とともに検討した。プラトンおよびプロティノスの思索において知性的なものと感性的なものとの関係を、動態を明確にする観点から考察し、その成果を、フランスのパリで開催された38e congres de l'ASPLF : La participation, De l'ontologie aux reseaux sociauxにおいて、"Participation platonicienne : intervention dynamique de la forme ?"と題してオンラインにて発表した。
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