『エンネアデス』第28論文「魂の諸問題について(第2篇)」において、「魂の痕跡」が肉体の活動に及ぼす活動についての議論解釈を遂行し、肉体と区別される魂は変化せず非受動的であり、他方で情動が魂ではなく肉体に生じることを主張するプロティノスの思想を検討した。また、その基盤の上で、その他の論文分析を遂行し、肉体と区別される魂がいかにして肉体に生を与えているのかという観点から、魂が自らの痕跡を肉体に送って機能させているというプロティノス理論の独自性について考察した。その考察結果を、8th Interdisciplinary Symposium on the Hellenic Heritage of Sicily and Southern Italy (“Soma kai Psyche - Mind and body”)において、"Impassive soul and animation of the body in Plotinus"と題して発表した。また、『エンネアデス』第26論文「非物体的なるものの非受動性について」において、魂は「動」の原因ではあるが、動かされるのは肉体であることについての議論を確認した上で、肉体に生じる情動のあり方を、肉体に魂から送られた痕跡がもたらす「動き」の側面から考察し、XXXIXe Congres de l'Association des Societes de Philosophie de Langue Francaise (ASPLF)において、"Mouvement et affections dans la relation du corps et de l'ame chez Plotin"と題して発表した。 研究期間全体を通じて、感覚知覚と痕跡に関わるテキストの解釈を通じて、プロティノス思想における感性と知性の協働のありようを、とりわけ動態の側面からその特質を捉えて、発表し論文公刊することができた。
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