研究課題/領域番号 |
18K00135
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研究機関 | 沖縄県立芸術大学 |
研究代表者 |
高瀬 澄子 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (60304565)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 音楽論 / 琉球古典音楽 / 日本音楽史 |
研究実績の概要 |
2021年度は、(1)日本の江戸時代の音楽論に関する研究、(2)『歌道要法』の伝本に関する補足調査、(3)論文の投稿を行った。 (1)彦根城博物館所蔵「律呂図板」「新之律板」(計5点)は、安倍季良(京都方楽人、1775~1857)によって作製された、音楽理論に関する道具である。文化13年(1816)に1点、天保13年(1842)に2点、弘化2年(1845)に2点が作製され、その構造から、中国のいわゆる旋宮図に相当するものであることが明らかである。これらの道具に示された理論を読み取ると、1.律と呂の音階は一貫しているが、半呂半律の音階は七声の名称に混乱が認められること、2.天保13年(1842)の2点は、朱載イク『楽律全書』の「楽学新説」を参照し、中国の律名や調名を使用するなど、中国の理論の影響が認められることが明らかとなった。「律呂図板」「新之律板」には、日本の雅楽の音階を中国の理論によって解釈しようとした江戸時代の楽人の試行錯誤の跡を窺うことができる。研究成果は、「彦根城博物館所蔵「律呂図板」の構造と理論」(中日音楽比較研究及び團伊玖磨先生音楽創作研究国際学術シンポジウム、2021年5月18日、福建師範大学、オンライン開催)として口頭発表した。 (2)古堅盛保編纂の安富祖流工工四のうち、1935年版(沖縄県立公文書館、2021年11月2日)、1954年版(個人蔵)を閲覧調査した。 (3)口頭発表「二つの『歌道要法』」(沖縄文化協会第4回東京研究発表会、2019年9月7日)に、その後の補足調査の結果を反映させて加筆修正し、論文として投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最終年次(2020年度)に1年延長を申請し承認されたため、2021年度は延長年次に当たる。 延長年次の計画として予定していた、『歌道要法』の伝本に関する補足調査と論文の投稿、日本の江戸時代の音楽論に関する研究をほぼ達成した。しかし、引き続き、図書館・博物館等の利用制限や県内外への移動制限により、『顧誤録』の『歌道要法』への影響に関する補足調査と論文の投稿はまだ行っておらず、研究の総括には至っていない。そのため、研究計画の再延長を申請し、承認された。
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今後の研究の推進方策 |
再延長年次(2022年度)は、『顧誤録』の『歌道要法』への影響に関する補足調査と論文の投稿を行う予定である。さらに、もし可能であれば、先行研究で参照されていない『歌道要法』の写本の翻刻を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、引き続き、旅費を使用していないからである。延長年次に研究成果を発表した国際学会はオンライン開催となり、海外渡航の必要がなかった。しかし、海外渡航はまだ困難と思われるものの、国内外の学会活動では対面も再開されつつある。再延長年次は、補足調査や研究の総括だけでなく、研究者間の対話や交流にも使用したいと考えている。
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