研究実績の概要 |
本年度は、沖縄での現地調査を実施し、宗教施設で演奏される宗教歌謡(バジャン、キールタン)の調査継続した。これらの歌謡の旋律的特徴については、成果の一部をすでに発表している(小日向, 英俊. 2018. 沖縄インド人コミュニティーの宗教歌謡-旋律構造(その一). 伝統と創造, Vol.7, 41-54、および小日向, 英俊. 2019.沖縄インド人コミュニティーの宗教歌謡-旋律構造(その二). 伝統と創造, Vol.8, 25-36 )。現在、バジャンの歌詞に着目した分析を継続中である。 上記バジャンの会は、基本として1週間に2回開催されており、1回はインド人コミュニティー中心,2回目はインドの聖者信仰であるサイババ派の沖縄支部としての活動である。宗教を媒介として移民社会がそのアイデンティティーを確認する場であるとともに、インドの宗教的世界、精神世界に惹かれる日本人が交流する場ともなっていることを、再確認した。 また一方で、沖縄インド人コミュニティーの人々の多くが、シンディー語を話す人々である。グジャラート州アーメダーバード市でのフィールド調査も実施した。アーメダーバード市のシンディー系コミュニティーの居住区(クーベルナガルとその周辺地区)のヒンドゥー寺院およびスィク寺院の位置を確認・訪問し、宗教歌謡の実践についても関係者にインタビューを実施した。その中で興味深い事例は、沖縄インド人の宗教歌謡の楽曲の一部に酷似する歌が、ある寺院で歌われていた点である。インド国内におけるスィンディー系コミュニティーが謳う宗教歌謡が、直接・間接に、在沖縄インド人コミュニティーに伝わっている可能性も示唆しており、今後の研究のポイントにもなる示唆を得ることができた。 沖縄においては、スィク教とヒンドゥー教の混淆が観察されるが、グジャラート州アーメダーバードにおいても同様の状況かについては、さらなる調査の必要性が感じられた。
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