研究課題/領域番号 |
18K00140
|
研究機関 | 東京音楽大学 |
研究代表者 |
小日向 英俊 東京音楽大学, 音楽学部, 客員教授 (00399742)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | インド系移民 / 音楽 / 宗教混淆 / 沖縄 / 神戸 |
研究実績の概要 |
2018年度における沖縄調査により収集した、在沖インド人コミュニティーから得た宗教音楽資料の分析を継続した。歌唱テキスト『Gurvari』の歌詞分析を継続している。これまでの研究に於いて、在沖インド人コミュニティーの多くの人々の故地がシンディー地方であり、現地インド・パキスタンにおいて見られるとされる、ヒンドゥー教・スィク教の混淆現象が、在沖コミュニティーにも確認された。
2019年度には、阪神地域(特に神戸)在住インド人コミュニティーの音楽に着目した。在日インド人コミュニティーの中ではいわゆるオールドカマーに分類される人々であり、日本社会の中で強い経済基盤を築いた歴史を持つ。住居は神戸、仕事は大阪といった生活様式を持つ人々が多い。2019年度の調査では、文献探査により神戸在住インド人コミュニティーの歴史を確認し、現地調査を2度実施した。コミュニティーの音楽実践の中心的なものに、定期的に開催される宗教儀礼とそこで演奏する宗教音楽があるが、神戸においては宗教的多様性が認められ、スィク教、ヒンドゥー教、イスラーム教のコミュニティーがそれぞれの宗教施設で活動を行っていることを確認した。スィク教宗教施設および市内での観察とインタビューの結果、在日歴の長さ故か、日本人とインド人の国際結婚の例も見られることは、在沖コミュニティーとの対比を形成する。インド人男性と日本人女性の家族の場合、女性がスィク教などへ改宗し、これらの宗教音楽実践に積極的に参加する姿も観察された。
神戸では、西日本最大のインドの祭典「インディア・メーラー」が1年に1回開催され、インドの音楽文化に日本人が触れる恰好の機会となっている。残念ながら、2019年度の調査では、これを直接観察する機会を取れずに終わった。次年度に実施する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度の研究計画で得たテキスト資料の分析が2019年度も継続した。現地協力者への面談確認作業を2019年度末近くに予定していたが、新型コロナウィルス感染症(COVID19)拡大の影響により来沖を控えたため、未了となった。2020年度には、感染対策を講じながらこの分析を終了する予定である。
2019年度研究計画にある阪神地域の調査では、当初予想したスィク教宗教施設での訪問調査の回数が上記の理由から少なくなった。
|
今後の研究の推進方策 |
沖縄調査から得た資料の分析を、現地協力者との確認作業を経て終了したい。新型コロナウィルス感染症(COVID19)への対処により、対面での確認が困難になる可能性があるため、現在代替策を模索している。
阪神地域(神戸)のインド人コミュニティーについては、スィク教の音楽実践を2020年度にも継続する。また、神戸に見られる宗教的多様性を考慮すれば、ヒンドゥー教寺院、モスクでの観察機会を得るべきであるが、上記理由から移動の制限が継続するなどした場合、どれだけの回数の観察機会を得られるかが、懸念事項として浮上している。現時点では、これらの施設における宗教集会がどのような状況か不明なため、6月よりのフィールド調査に先立ち、状況確認が必要だと考える。
2020年度の研究計画に含まれる東京地域のインド人コミュニティーについては、すでに2018年度以前より接触の機会を多く得ており、2019年度も散発的に観察を行っている。ただ、これまでの観察対象は大小の文化イベントであったため、2020年度は日常生活に付随する宗教音楽実践について着目して観察する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2019年度研究計画で予定した阪神地域でのフィールド調査の回数が少なくなり、また国際学会での情報交換・収集を2020年度に延期したため「旅費」の未使用分が生じた。また、図書購入に充てた「物品費」について、多くの資料をインターネット資源として無料で入手可能であったことにより、未使用分が発生した。
2020年度には、国際学会での情報収集・交換を予定し、また国内フィールドワーク調査の回数も感染症拡大の状況に鑑みながら増やす予定である。
|