研究課題/領域番号 |
18K00146
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
児玉 竜一 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10277783)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 演劇雑誌 / ジャーナリズム / 歌舞伎雑誌 / 歌舞伎 / 演劇評論 / 劇評 |
研究実績の概要 |
創刊から終刊までを押さえた演劇雑誌の点数を増やすことを目標として、演劇雑誌の書誌的な調査を進めた。あわせて、演劇雑誌の社会的・文化的な位置づけを分析・考察する作業を進めた。この点については、創刊100周年を迎えた『歌劇』についてのコメントを求められ、新聞紙上に演劇雑誌の文化的な意義を発表する機会を得た。 演劇雑誌の細目を体系的に網羅する作業についても調査を進めた。PDF化による共有と、目次細目の入力についての方法を検討しつつ、計画の修正を行った。 このようにして調査を進めた演劇雑誌研究の成果については、上演資料や写真資料、映像資料等の検証とあわせて、多岐にわたる発表を行った。大正期の演劇雑誌から得られる知見については、主に梅蘭芳初来日公演に関する発表を、北京での梅蘭芳初来日百周年記念学術講演会において行った。昭和後期については、主たる研究対象している歌舞伎の範囲を超えて、現代演劇を扱う諸雑誌の調査結果を踏まえて、演劇評論家扇田明彦の評論活動をたどる調査結果を、演劇博物館における展示「演劇評論家・扇田昭彦の仕事」として展観し、評論活動を展示するという稀少な試みを展開することとなった。併せて、関係者を招いての講演会の聞き手および取りまとめによって、現代演劇の評論を、その掲載媒体とともに鳥瞰・分析する機会を得た。平成期については、改元をひかえて平成年間の歌舞伎を総体的に回顧する機会を複数得ることによって、演劇雑誌の調査結果を援用した知見を公表することができた。それらの研究成果は、座談会等の活字化によって次年度以降に出版される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
埋もれた演劇雑誌、知られざる演劇雑誌の発掘などにも力を入れ、古書店等からの購入を含めて、新しい知見を得ることができている。創刊から終刊までを確実に押さえた演劇雑誌の点数も着実に増えており、演劇雑誌を総合的に捉え直すという点では、おおむね順調に進展しているとみなすことができる。演劇雑誌といっても扱う範囲、時代はきわめて広範に及ぶので、様々な角度、多彩な時代背景にもとづく研究成果を、あらゆる機会と媒体において公表し得ている点からも、おおむね順調とみなしてよいかと思われる。 雑誌細目の入力作業についても見込みを確かなものにすることが、今後の目標の柱となると思われる。方法的な検討はすでに重ねているが、マンパワーの問題を含めて、人材配置等が課題になると思われる。それらの予算的な配分と、研究課題として掲げている「国際的な比較」の実現への、時間および予算の配分とのバランスが、今後の課題になるものと思われるが、そうした課題は予期しない事態の出来には当たっていない。
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今後の研究の推進方策 |
従来進めている通り、演劇雑誌の書誌的な調査にもとづいて、創刊から終刊までを押さえてゆく作業を基本に据える点は、変わりがない。 これに加えて、国際的な比較という研究上の特色を、より鮮明に見せるための方途について検討を加えてゆくことを次年度の課題としたい。具体的には、演劇博物館所蔵の海外演劇雑誌を中心に、書誌的な特徴の概要をつかみ、国内の演劇雑誌との対応関係についての知見を涵養してゆくことが課題となるであろう。とりわけ、グラフィックを重視した雑誌の流行と流通については、特徴的な共通点が予想されるので、研究誌、評論誌も扱うのは勿論ながら、写真を多用する雑誌を優先的に調査することを予定している。そこから得られる調査結果は、おそらく演劇写真の歴史についても多くの新しい知見をもたらすことが期待される。また、国内の演劇雑誌についていえば、写真のみならず近代美術に属する表紙絵等に各誌の特徴があり、こうした点も留意した。いわば演劇雑誌を通して、演劇のみならず、写真、美術、あるいは映画といった、隣接分野を包含した文化的な付置連関を明らかにする方策をさぐってゆきたいと考えている。
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