研究課題/領域番号 |
18K00148
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研究機関 | 昭和音楽大学 |
研究代表者 |
酒井 健太郎 昭和音楽大学, オペラ研究所, 准教授 (60460268)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 公演記録 / 東京音楽学校 / 新交響楽団 / 東京室内交響楽団 / 関西交響楽団 / 柳澤健 |
研究実績の概要 |
プリングスハイムは、特に戦後の日本において、日本と海外の音楽家の「架け橋」としての活動をしたと推定される。だがその実態はいまだはっきりしない。彼は戦前・戦中に続き戦後も日本を活動拠点とし、海外、特にヨーロッパの音楽家・関係者と頻繁に書簡をやりとりした。海外の大学図書館にこの大量の書簡が残されており、それを調査・分析することでプリングスハイムがどのようにして「架け橋」としての役割を果たしたか明らかにするのが本研究の目的である。 ところが、新型コロナウイルス感染症の拡大のために海外での資料調査ができなくなった。そこで、国内で実施できる研究トピックに切り替えて、プリングスハイムが関与した音楽公演についてついて資料収集・分析を進め、公演記録を作成した。 公演に関する当時の資料の現物18点を収集し、これと二次資料(復刻資料、書籍、ウェブデータベース等)16件を参照した。その結果、プリングスハイムが関わった127の公演のデータ(のべ262件)を得ることができた。 これらの公演データから、以下の6点についてデータを整理・分析し、所見を述べる原稿を執筆した。(1)東京音楽学校と新交響楽団の公演(1931年12月-1937年7月) (2)東京室内交響楽団(東京室内交響楽演奏会)(1941年12月-1943年5月) (3)関西交響楽団定期演奏会(1954年3月-1957年1月) (4)オペラ公演(1932年7月-1967年4月) (5)日劇・帝劇(東宝)での公演(1940年3月-1943年6月) (6)タイ王国関係の公演 昨年度から継続して、プリングスハイムが直接的に関わった人物についての調査を進めた。なかでも「詩人外交官」と呼ばれた柳澤健(1889-1953)に注目して、資料収集・分析をおこなった。また、プリングスハイムの薫陶を受けた日本人音楽家への接触を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により、本研究が中心に据えていた海外での資料調査を実施できなくなった。そのため当初の研究計画からすると、研究は「遅れている」ことになる。 しかし、コロナ禍下においても実施可能である、日本国内での資料調査とインタビュー調査を進めることにし、2021年度は(まだインタビュー調査は難しい状況が続いていたが)可能な限り資料調査を進めることができた。まだ思うように調査を実施できる状況ではないものの、資料・情報の収集・分析は進展しており、研究の進捗状況は「やや遅れている」にあたる。
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今後の研究の推進方策 |
当初は2021年度をもって研究期間が終了することになっていたが、2022年度に海外調査ができる程度に新型コロナウイルスの感染状況が収まる可能性を考えて、研究期間を1年間延長させていただくことにした。 2022年度は、海外調査が可能になれば実施するつもりであるが、本報告作成現時点では難しいように思われる。そこで、プリングスハイムを直接知る方へのインタビュー調査と、プリングスハイムの作曲法・教授法についての検討を中心に進める。その成果は秋の学会で報告したい。 また2022年は歿後50年にあたるため、この機を捉えて、プリングスハイムをより多くの方に知っていただくための学術公開イベントの開催を検討・実施したい。これは研究成果の社会への還元にもなるはずである。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍が収束し、海外での資料調査が可能になる可能性を考えて、研究期間を延長させていただき、そのための研究費を残した。 海外での資料調査が可能な状況であれば、残額はそれに使用する。そうでない場合は資料収集、インタビューにかかる経費や謝金等に使用する。またいずれの場合も研究成果を発表するための学会参加にかかる経費に使用する。
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