本研究は、カナダのマクマスター大学図書館が所蔵しているクラウス・プリングスハイム(1883-1972)資料のうち書簡を対象として整理・分析することにより、プリングスハイムが主に1945年以降におこなった音楽活動、殊に日本の音楽界と他国・地域の音楽界とをつなぐ取り組みを明らかにすることを目的としている。コロナ禍の影響で海外調査ができず、研究期間を1年間延長させていただいたが、令和4年度も海外調査が難しく、国内で可能な調査に切り替えた。具体的には以下である。 ●プリングスハイムに教えを受けた方々にコンタクトを取り、対面あるいは電子メールによるインタビュー調査を実施した(5名)。また、プリングスハイムの評伝の著者(2名)に対しても同様にインタビュー調査をおこなった。さらにプリングスハイムに関わる領域の研究者にもコンタクトをとった(7名)。 ●対面で実施したインタビュー調査は録画し、各人から寄せていただいたスピーチのビデオとあわせて、プリングスハイムに関するオーラル・ヒストリーのビデオを作成するべく、編集作業を進めた。海外発信のため、字幕を入れることとし、翻訳・校閲作業も進めた。現在、編集と公開に向けた確認をおこなっている。 ●日本音楽学会の全国大会でプリングスハイムに関するパネル・ディスカッションをおこなった。計4名の研究者からそれぞれの領域の研究の現状とこれからの課題を発表していただいた。プリングスハイム研究により、これまで見逃されてきた音楽思想史の一側面に光を投じることができること、そのためには多面的な課題が残されていることを論じた。 ●プリングスハイムの孫(日本で生まれ育ち、プリングスハイムと近い関係にあった)にコンタクトを取った。オンラインでやり取りを続け、来日した際に会って話を伺うことができた。貴重な資料の提供やインタビュー調査など、今後の協力を約していただいた。
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