研究課題
基盤研究(C)
本研究は、能という芸能で用いる「能管」という横笛の演奏技法の形成と伝承の歴史的過程を、現存する囃子伝書や手付(楽譜類)の所蔵調査・網羅的収集・丹念な分析と解読を通じて明らかにするものである。一噌流関連史料に加えて、他流儀の史料や影印翻刻されている史料等も活用して検証を進めた。その結果、室町後期から江戸初期の能はいまだ演出が流動的で、能管の役者に任された自由な演出の部分が今より多かったことが具体的に明らかになった。
日本音楽史
従来の能楽研究において、囃子伝書や手付類(楽譜)を用いて演奏技法の具体相を紐解く演出研究は、必ずしも積極的になされてきたとは言えない。本来、演奏技法の解明なくしては、能のいきいきとした舞台を真に理解することは難しいにもかかわらず、能の演奏技法の歴史は充分には描かれてこなかったのが実状である。本研究は能管を軸に現在の能の演出が確立した伝承過程の一端を描出し、伝承の諸相をリアルに捉えようとする。それにより、従来の能楽研究の隙間を埋め、能の演出史の構築に一定の寄与を果たすと考えられる。