研究課題/領域番号 |
18K00151
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研究機関 | 京都芸術大学 |
研究代表者 |
牛田 あや美 京都芸術大学, 文明哲学研究所, 准教授 (00468729)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 漫画 / 挿絵 / 雑誌 / 新聞 / 朝鮮 |
研究実績の概要 |
本年度は、北宏二が作り出したキャラクターである「コチュブ」と作家自身の関係について論じることを中心とした。今でこそキャラクタービジネスといえば巨大マーケットである。当時は著作権があいまいなため、現在のビジネスのようなわけにはいかない。しかし、田川水泡の「のらくろ」の例からもわかるように、戦前から「キャラクター」は産み出されていた。いまでは、キャラクターの人気の指標が、売れっ子の漫画家であることをはかる基準でもある。年月がたち、田川水泡の名前は忘れられても「のらくろ」というキャラクターはまだまだ知っている人が多い。同様に韓国において、金龍煥の名前は忘れられても、「コチュブ」を知っている人が多い。 実は「コチュブ」は、日本で誕生したキャラクターである。しかしながら「コチュブ」は日本ではほぼ知られていない。1937年頃、ハングルで書かれたタブロイド二頁紙『東京朝鮮民報』から誕生した。誕生したのは日本であるが、その存在を現物で私は見たことがない。現在でも探している最中である。 「コチュブ」のキャラクターが醸成したのは、戦後の朝鮮と朝鮮戦争後の韓国である。 「コチュブ」のキャラクターは鼻が大きく、ふくらんでいる。言葉の意味としても、天狗のような鼻である。 彼の活躍していた雑誌から鑑みると、日本のキャラクターから影響を受けたものと考えられる。これは多くの日本のキャラクターでもお馴染みの姿かたちである。これは戦後、登場してくるアトムやオバケのQ太郎、ドラえもんなど、多くの日本のキャラクターも影響を受けている。 しかしながら、作者自身が、キャラクターであるというケースは稀である。手塚治虫イコール「アトム」、藤子不二雄イコール「ドラえもん」とはなっていない。「コチュブ」は金龍煥のセルフ・ポートレイトである。掲載された「コチュブ」から金龍煥の姿がみえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度のまとめたデータから見えてくる作品の特徴を中心とし、発表していった。一昨年度の2、3月、韓国において、資料集め、インタビューを計画していたが、新型コロナウィルスの感染症のため、途中で切り上げることとなった。昨年度はコロナ禍となり、韓国への調査は断念せざるを得なかった。また日本においても調査に向かいたかったが、越県ができない期間があった。本年度はほぼ越県することが許されず、調査に行くことができなかった。 そこで、データから見えてくる北宏二の作品を研究をした。韓国漫画Webtoon学会にて行われた「COWEKO21 Autumn International Conference Gyeongnam Webtoon Campus」のオンライン学会においてBest Academic Awardを受賞した。 また、南方を中心とした研究会にて北宏二の描いた南方の挿絵についても他の作家と比較しつつ発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
現在のコロナ禍の状況では、ソウルにある資料収集やインタビューは難しいと考えている。しかし、解禁された場合にはすぐに調査へ行く予定である。東京での資料収集もできることになったことから、積極的に行いたい。 データ化した戦後における日本での活躍をもとに、彼の戦前の作品を再度手繰り寄せ調査を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により越境することがほぼできず、調査へ行くことができなかったためである。
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