計画していた研究は、すでに2019年度には終了している。しかし、最後のインタビューがコロナ渦となり、不可能となってしまった。2022年度は、渡航が許されたため、インタビューが可能となったことから、それを中心に研究、分析を行った。 韓国内において、金龍煥の作品と思われていたもの、さらに経歴などが、資料と照らし合わせてみると齟齬があることが研究過程において徐々に明らかとなった。そのなかでも、金龍煥の挿絵だと思われていたものが、別の作者ではないかと疑義がでてきた。それを解決するためのインタビューとなっている。 インタビューの中心は、金龍煥の作品と考えられていたものを、再鑑定することであった。韓国の漫画振興会をはじめ、年輩の韓国の漫画家、弟子筋などから再度、挿絵を鑑定してもらった。そのなかには、韓国漫画の文化財登録の鑑定を行っている漫画家もいる。現在、その鑑定結果と疑義が生ずるものについては論文を執筆している。 研究発表では、金龍煥が、彼自身をモデルとして描いたとされる「コチュブ」を巡って、インタビューにて得た情報を中心に、日本の漫画界とは異なる登場人物と作家の関係を「作家は物語の主人公となり得るか‐マンガ家・金龍煥の「コチュブ」を巡って」を論じた。 また、今回の金龍煥の研究を通じ、子ども雑誌において、戦局がひどくなると同時に「南方」の挿絵が多くなっていることに気が付いた。もちろん、金龍煥も例外ではなかった。そこで、「北宏二の挿絵にみる南方」を発表し、当時のメディア戦略が子ども雑誌の「南方」の挿絵に及んでいることを論じた。
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