研究課題/領域番号 |
18K00153
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研究機関 | 大阪音楽大学 |
研究代表者 |
西村 理 大阪音楽大学, 音楽学部, 准教授 (00552738)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大阪放送局(JOBK) / 朝比奈隆 / 大阪室内楽協会 / 大阪ラヂオオーケストラ / 大阪放送交響楽団 |
研究実績の概要 |
本年度は、朝比奈隆が出演した戦前の大阪放送局(JOBK)の音楽番組を調査し、その番組に関する新聞や雑誌の記事の収集を行った。朝比奈は戦後、大阪フィルハーモニー交響楽団を設立した指揮者として知られているが、戦前にヴァイオリン奏者、ヴィオラ奏者、また大阪ラヂオオーケストラや大阪放送交響楽団に指揮者としてラジオ番組に出演していた。ラジオ番組の出演に加えて、大阪での演奏会の出演についても調査を行い、大阪という都市のなかに朝比奈の活動を位置づけた。具体的な内容は以下である。
1、朝比奈は、1932年に大阪室内楽協会のヴィオラ奏者としてラジオ番組に出演し、初めて公の場に登場した。以後、大阪室内楽協会のメンバーとして、ラジオ番組と演奏会の両方の場で活動を繰り広げた。1934年からは大阪ラヂオオーケストラのメンバーと共演を重ねていった。こうした活動から、ヴィオラ奏者としての朝比奈が、ラジオ番組と演奏会との両方の場によって初期のキャリアを築き上げていったことが明らかになった。なおこの成果を「戦前・戦中の室内楽奏者としての朝比奈隆――ラジオ番組と演奏会での活動」(土田英三郎ゼミ有志論集編集委員会『音楽を通して世界を考える』所収)としてまとめた。
2、朝比奈は1936年に指揮者としてデビューすると、次第に指揮者としての活動に比重を置き、またヴィオラよりもヴァイオリンを演奏していくようになる。指揮活動において、朝比奈は演奏会で活動を展開し評価が定まってから、1938年にラジオ番組に出演していたことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『番組確定表』の調査をNHK放送博物館、番組に関する新聞や雑誌の資料調査を国会図書館で、いずれも授業期間外に集中的に行っているため、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である次の年度は、大阪放送局(JOBK)の文芸課長であった奥屋熊郎が、番組制作において大きな力をもっていた。奥屋が開発した「新種目」を軸にして、大阪における音楽趣味の形成を明らかにしていく。 ただし、奥屋に関する資料が限られているため、新聞記事や雑誌の記事を丁寧に調査していくことで、奥屋の言説を収集する。また、当時の人々が奥屋が開発した「新種目」について、どのような見方をしていたのかを知るために、新聞の投書欄や雑誌の記事を収集していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)調査を進めるなかで、新聞の記事をより丁寧にみていく必要があると判断し、研究協力者ではなく研究代表者自らが資料収集を行うことにした結果、人件費を抑えることができたため。また東京での調査を3月に予定していたが、新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から中止したため。
(使用計画)物品費や東京での調査のための旅費にあてる。
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