• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

障害者の創作活動における芸術家の役割の検証

研究課題

研究課題/領域番号 18K00154
研究機関甲南大学

研究代表者

服部 正  甲南大学, 文学部, 准教授 (40712419)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード障害者芸術 / アウトサイダー・アート / アール・ブリュット
研究実績の概要

本研究は、障害者の創作現場への芸術家の関与の諸相を分析することを通じて、障害者の創作活動が芸術分野における実践として評価される過程で芸術家が果たす役割を明らかにすることを目指すものだ。
今年度の研究の最大の成果として、フランスで障害のある芸術家の作品の発表や販売を促進するために設立された非営利団体エガールのディレクターであるマリー・ジロー氏と共同研究を行ったことが挙げられる。エガールは、パリ近郊クレイエ=スイイの大規模な障害者支援施設の代表者であるルナデット・グロジョー氏が2010年に設立したものだ。研究代表者は、エガールに所属する芸術家を紹介する日本での展覧会の企画に関わり、その実現の過程でジロー氏、グロジョー氏と頻繁に意見交換を行った。
エガールでは、支援する芸術家の決定にあたり、学芸員、美術評論家など芸術分野の専門家による審査委員会を設置し、その合議によって採択の可否を決定する。エガールを設立したのは障害者福祉に関わる団体であり、芸術家の活動を支援するための金銭的基盤も主に障害者支援の補助金や寄付金によるものである。しかし、作品の評価は美術の専門家に委ね、支援する作家の活動の場としても福祉界ではなく美術業界を重視している。そのため、エガールとしてのグループ展よりも、作家の個展の開催に意義があると考えている。このことは、「アール・ブリュット」などの名前のもとにグループ展で障害のある芸術家を紹介することが主流となっている日本の状況とは好対照である。今後は、この知見を他の事例を検証する際の参照軸としていくことができるだろう。
その他、ベルギーでマンガとアール・ブリュットの関係を研究するErwin Dejasse氏との共同研究にも着手した。国内では社会福祉法人椎の木会落穂寮、社会福祉法人なかよし福祉会第二栗東なかよし作業所、NPO法人ポパイなどについて調査・研究を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

前年度に完了予定だった別の研究課題の研究期間延長を行ったため、本年度はそちらの課題の完成に力を注いだ。そのため、本研究課題の進捗に遅れが生じることとなった。しかしながら、当初予定していた研究成果公開のためのウェブサイトの構築は、次年度前半には完成する予定であり、その後は予定通りに研究を遂行できるものと考えている。

今後の研究の推進方策

着手したErwin Dejasse氏との共同研究を進展させ、Dejasse氏が以前に勤めていたベルギーを代表する障害者のアトリエ「La "S" grand atelier」の現地調査を行う。「La "S"」は、様々な分野の前衛的な芸術家と障害のある芸術家の共同制作を行うことに特色があり、欧米の「アウトサイダー・アート/アール・ブリュット」の枠組みを超えた活動として異彩を放っている。障害者の芸術活動における芸術家の役割を考察するうえで、「La "S"」の活動は大きな示唆を与えてくれるだろう。
国内では、障害のある芸術家と共同制作を行ったことのある芸術家や、そのような活動を支援する団体等への聞き取り調査を進める。

次年度使用額が生じた理由

研究計画に遅れが生じたため、研究成果公開のためのウェブサイトの構築を次年度に繰り越したことにより、次年度使用額が生じた。現在、ウェブサイトの構築は順調に進んでおり、繰越金は早期に執行する予定である。次年度交付金については、当初の研究計画通りに執行を進める予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件)

  • [雑誌論文] 現代の「アール・ブリュット」と日本の作品2019

    • 著者名/発表者名
      服部正
    • 雑誌名

      臨床精神医学』

      巻: 第48巻第3号 ページ: 317-324

  • [雑誌論文] アウトサイダー・アートと現代社会-映画「地蔵とリビドー」から考える-2018

    • 著者名/発表者名
      服部正
    • 雑誌名

      神奈川大学評論

      巻: 第91号 ページ: 45-54

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi