研究課題/領域番号 |
18K00154
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
服部 正 甲南大学, 文学部, 教授 (40712419)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アウトサイダー・アート / アール・ブリュット / 障害者の創作活動 |
研究実績の概要 |
障害者の創作活動への芸術家の関わりの諸相を検証する本研究において、今年度の主な実績として、以下の内容を挙げることができる。 1)美術家・長沢秀之氏が長年にわたって取り組んできた「対話「私が生まれたとき」プロジェクト」について長沢氏にインタビューを行い、その内容をまとめたものを学会誌に投稿し、受理・掲載された。このプロジェクト自体は、障害者の創作活動と直接かかわるものではないが、障害者の創作に美術家が関わる際のひとつの可能性としてのリサーチ型アートの可能性を開くヒントとして、研究者は長沢氏のこの活動に注目し、対話を続けており、その成果をまとめたものである。 2)舞踏家・岩下徹氏にインタビューを行い、これまでに岩下氏が行ってきた障害者との協働による即興ダンスについて映像や文献資料の提供を受けた。インタビューでは、障害者との協働により、障害者が少なくともセッションの間において岩下氏と心の交感があること、障害者が長い時間をかけて少しずつ変わっていくこと、岩下氏自身のダンスへの向き合い方が障害者との協働によって変わってきたことなど、印象深い体験談を聞くことができた。ここで得た貴重な知見は、次年度に論文としてまとめる予定である。 3)日本のマンガと障害者の創作の関係について、オンラインで行われたブリュッセル自由大学でのシンポジウムで基調講演を行った。2019年からベルギーの研究者と共同で行ってきた研究の成果であり、漫画家と障害のある創作者の協働の可能性について検討することにつながった。 4)障害者の創作現場を映像アーティストと訪ね、ドキュメンタリー映像の作成に関わった。この手法は、次年度にさらに発展させたいと考えている。 その他、文献研究の成果を福祉、心理学、芸術学等の専門誌、一般誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響により、障害者支援施設の訪問が極端に制限される状況の中、聞き取り調査を十分に進めることができていない。メールやオンラインの活用も想定されるが、制作現場の観察には現地訪問が不可欠であり、悩ましいところである。国外での調査については、さらに困難な状況になっている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に組み込んでいた国外事例の研究は断念し、国内の事例の調査に注力したい。研究者が本研究とは別に関わっている人間文化研究機構「博物館・展示を活用した最先端研究の可視化・高度化事業」での取り組みが非常に有効だったため、本研究にもその手法を取り入れ、展示を用いた研究の深化と研究成果の公表に取り組むことを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」で言及したように、新型コロナウイルス感染症の影響により、研究の進捗状況に遅れがみられるため。次年度、遅れを取り戻すべく、「今後の研究の推進方策」に記した方法により研究を遂行する。
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