研究課題/領域番号 |
18K00159
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
宮崎 甲 千葉大学, 教育学部, 教授 (60272291)
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研究分担者 |
三枝 一将 東京藝術大学, 美術学部, 講師 (60529949)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 平安期鋳造 / 鎌倉期鋳造 / 蝋型鋳造 / 原型消失法 / 鋳造仏 / 銅造千手観音 |
研究実績の概要 |
研究代表者の宮﨑および研究分担者の三枝は申請当初の研究年次予定に従い2019年度に予定している那古寺銅造千手観音像の科学調査の準備作業を進めている。具体的には30年6月、31年2月に実地調査および博物館所蔵のレプリカの解体調査を行い形態を詳察、研究者および研究協力者間で問題所在の確認、原型製作技法・素材と鋳型製作技法・素材の2点から考察・意見交換を行い、それぞれ複数の可能性を視野に入れ情報を収集した。科学調査の手法や可能性について情報収集を行い仏像内部構造を撮影できるよう様々な可能性についての準備を行っている。また研究1年目である2018年度は国内の同時代制作の類似仏(多手金銅仏)のサンプル調査を実施し、特に鋳造仏の原型製作技法・素材と鋳型製作技法について基本的な考え方や技法原則を見出すよう考察を行った。具体的には兵庫県常勝寺銅造千手観音立像、兵庫県朝光寺銅造千手観音立像、滋賀県大津市歴史博物館三井寺銅造千手観音立像、千葉県銅造准胝観音立像。いずれも詳細撮影を通して一定の鋳造法や組み立て法のマニュアルに則っていることが確認できた。ただ、大きさや形態の異なるそれぞれの仏像では脇手部分の原型や鋳造技術にかなり異なる制作方法が用いられている可能性があることなどが確認できた。 本研究は実証鋳造を伴う。2021年度からの実証鋳造へ向けての技法研究も同時に始めている。木材消失鋳造に関しては研究代表者の宮﨑が、蝋原型の様々な製作法については研究分担者の三枝が担当して実験的な鋳造を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度の予定通り2019年度に行う当該仏像の科学調査に向けての準備作業として、当該仏像の予備調査、類似仏像の調査を行った。これによって、同時代の標準的な鋳造技術、造像法、多手仏の組み立て方などについての知識を蓄積した。2018年度は国内の同時代制作の類似仏(多手金銅仏)のサンプル調査を実施し、特に鋳造仏の原型製作技法・素材と鋳型製作技法について基本的な考え方や技法原則を見出すよう考察を行った。先行研究では明らかにされて来なかったこととして、平安後期に蝋原型鋳造技法を使ったと思われる作例も見つかったが、これについて鋳型作りの技法は検討の余地が残っている。他の仏像を継続して調査することで蝋の使用について明らかにすることが可能である。このように2019年度の科学調査に向けての準備は概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度より研究分担者に鋳型研究に実績のある松本を加え、より多角的な知見・実践的な経験からの研究体制を目指す。2019年度後半には科学調査を予定しておりそれに向けてさらなるデータの蓄積をはかる。具体的にはすでに存在するFRP製のレプリカから3Dスキャナーやプリンターを利用して脇手のサンプルを作り、鋳造型の材質や原型素材の考察に活用する。型の素材や技法によって「抜け勾配」の問題を具体的に考える手立てとして利用する。このような実制作によって、科学調査の実施の前には原形や型の材質や技法について複数の推論を立てることを目指す。一方で、科学調査の準備として技術者や必要機材の手配、当該寺院、研究者、研究協力者のスケジュールの調整を行う。寺院の運営や行事の妨げにならないよう配慮しながら綿密な準備が必要である。得られるデータをもとに幾つかの仮説を立て2021年度の実証に向けて具体的な制作スケジュールを立てる。
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