研究課題/領域番号 |
18K00161
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
伊藤 奈保子 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 准教授 (20452625)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | インドネシア / 般若波羅蜜 / Prajnaparamita |
研究実績の概要 |
昨年度は日本において、マレー半島・インドネシア諸島における密教美術の資料収集に徹し、それらの分析、考察を行った。その一部を「インドネシアにおける般若波羅蜜菩薩坐像について」と題し、日本印度学仏教学会第72回学術大会、令和3(2021)年9月5日(日)オンライン形式で発表を行い、『印度學佛教學研究』通号154号70巻3号に掲載した。また仏教文化学会第30回学術大会にて「インドネシアにおける弥勒菩薩像の現存作例について」を発表した。 ここではインドネシアにおける般若波羅蜜多菩薩坐像(Prajnaparamita)について述べる。転法輪印(説法印)の像を中心に取り上げたが、現段階では石造像3躯、鋳造像が2躯、鋳造像で智拳印を結ぶ大日如来と対をなす像が2組である。鋳造像は20㎝以下であり、中部ジャワ地域と東部ジャワ地域で出土し、 時代は8~11世紀に亘る。石造像は約1mを基準に巨大で東部ジャワ地域・スマトラの11~13世紀に確認できる。いずれも数は少ない。特徴としては、材質に関わらず女尊で一面二臂の坐像であり、高髻を結い宝冠(髪髻冠)を戴き、三面頭飾をつけ垂髪を垂らしている。耳飾・胸飾・臂釧・腕釧・足釧など 華美な装飾品で身を飾り、聖紐を左肩から右脇にかける。文様の入った裙を着け、その上から膝にかかる帯をつけ、体の左右腰の後方で大きなリボン状で結ばれ、その帯の端は台座の左右へ垂れる場合が多い。そして左手の甲を下にした転法輪印を乳房の前で結んでいる。左の台座から伸びる蓮茎を左の肘のあたりで内側から外側へ絡め、完品の作例では左肩の位置で蓮華上(開敷蓮華、または未開敷蓮華)に経典が置かれている。形式は単独では石造像が巨大で優品であり、またはVairocanaの左隣に坐した一式が確認できることからインドネシアでは般若波羅蜜多菩薩像は妃的な意味合いがあった可能性も推察される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍において、この1年間、海外調査を行うことができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
令和4(2022)年度、コロナ禍が収束するのを見極め、調査可能な地域を選択して資料収集を行う予定である。また今まで鋳造像、法具を中心に考察を行ってきたが、石造像等を加えた多角的視点に立ち、マレー半島・インドネシアの密教について考察を行い、学会で発表してゆく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度同様、コロナ禍における渡航禁止によるもの。当初予定していた海外調査による資料収集を行うことができなかった。感染の収束状況を見極め、今年度内に可能な地域の海外調査を行う予定である。
|