研究課題/領域番号 |
18K00163
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
神野 雄二 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 名誉教授 (60330669)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 篆刻 / 篆刻家 / 印章 / 書道 / 書学 / 書道史 / 山田寒山 / 山田正平 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日中における篆刻や印章の研究、中でも、日本の近現代の篆刻家の研究を実証的・総合的に行う点にある。 2020年3月に刊行した拙著『日本篆刻家の研究―山田寒山・正平を中心として【改訂版】』(創想舎)は、本研究の基礎的研究書と言える。また、2021年3月に、「山田寒山・正平を中心とする篆刻家の実証的・総合的研究」として、東京学芸大学における博士の学位(学術)を取得した。明治から昭和時代を代表する篆刻家である山田寒山(1856―1918)・正平(1899―1962)父子を取り上げ、実証的・総合的研究を行ったものである。 私はこれまで、日本や中国における印章・篆刻や篆刻家に興味を持ち、それへの史的考察や作品研究をテーマに据え論考を発表してきた。「日本の印章・篆刻」の研究はいくらか見られるが、近現代の篆刻家の事績研究や、その表現面・鑑賞面からの考察はあまりなされていない。本研究においては、これまでの先行研究の動向を踏まえつつ、歴史学・考古学的な面での研究の発展と、表現技法・鑑賞の面からのアプローチを行った。長い伝統を持つ篆刻という芸術を、今日的視点から捉え直す端緒となるものである。その点において学術的意義は大きいと言えよう。40数年に亘り、全国の学術諸機関・個人の収蔵家を訪問し、収蔵する印章や篆刻関係資料の調査・研究をし、基礎となる資料をより丁寧にデーター化し、その内容分析と作品研究を行った。同研究は、書学・書道史の対象としてだけではなく、美学・美術史、歴史考古学、文化史等その裨益するところは甚だ大きいと思われる。 今後は、それを基に、基礎研究を更に充実させるとともに、実証的・総合的に体系化をはかる。また、これまでの研究を踏まえつつ、その歴史・技法 ・鑑賞の実証的・科学的解明を行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ禍の影響により、フイールドワークがいくらか遅れているが、おおむね基礎研究は順調に進展している。 本研究は、日本の 篆刻や印章の歴史的、文化史的そして科学的な解明を目的としている。総括的には日本の印学の体系化を目指す。そのため、基礎研究を踏まえつつ、具体的には、歴史・技法・鑑賞の実証的・科学的解明を行う。本研究で扱うテーマの多くは、書学においても書道史においても、今日的課題であり、 長い伝統を持つ篆刻・印章を、今日的視点から捉え直す。これまで、関連する全国の諸機関・個人の収蔵する篆刻や印章と関係資料の調査・研究をし、基礎となる文献・資料を データー化し、分析、作品研究などを行ってきている。今後、篆刻や印章の基礎研究を更に充実させ、実証的・科学的・総合的に本研究を進め、研究をより充実させたく考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、日本における篆刻や印章の研究、篆刻家や印譜の、広い視野に立った実証的・総合的体な研究を目指している。これまで 日本や中国における印章や篆刻家に興味を持ち、それへの史的考察や作品研究をテーマに据え論考を発表した。また、全国の関連の研究機関・個人収蔵の篆刻や印章における関係資料の調査・研究をし、基礎となる資料をデーター化し、その内容の分析と研究を行ってきた。今後の研究は、これまでの基礎研究を踏まえつつ、発展的にその歴史・技法 ・鑑賞の実証的・科学的解明を行う。具体的には、以下の諸機関の中から、適宜重要な地域を選び、調査・研究を進めたい。本務校の熊本大学での調査・研究と、関連機関である永青文庫、東京荻窪在住の山田家の子孫、長崎市在住の小曽家の子孫、京都市在住の園田家の子孫、京都市在住の秦家の子孫等に伝わる篆刻・印章、そして東京都の藤山商事株式会社に収蔵する印章・篆刻、文献・資料の調査・研究などである。更に、東京国立博物館、大東急記念文庫、新潟県立図書館、早稲田大学、山梨県立図書館、山梨県立博物館、新潟市會津八一記念館、大阪府立中之島図書館、和泉市久保惣記念美術館、長崎市立博物館等である。今後発展的に、その他、日本各地の書道・美術に関わる関連の研究機関を訪れ、より広く詳細な調査をする。つまり、全国の関連の研究機関・個人収蔵の篆刻・書道・美術における関係資料の調査・研究をし、基礎となる資料をデーター化し、その内容の分析と研究を深める。 状況によっては、これまでのフイルドワークの成果をもとに、またこれまでの基礎研究を踏まえつつ、発展的にその歴史・技法 ・鑑賞の実証的・科学的解明を行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度へ下記の理由により、研究を延長したため。 コロナ禍の影響により、フイールドワークが進められなかった。今後、同研究を進めるにあたり、物品費・旅費等の経費が必要となる。 今後、可能な限り、フイ―ルドワークを進めるとともに、本研究の総合的な纏めを行う。
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